FURUNO ITS Journal

ITS業界記事 いよいよ開始するETC2.0。
東京モーターショーで発表された新サービスと、高齢ドライバー向けデバイスとしての可能性

第44回東京モーターショー(一般公開2015年10月30日~11月8日)は総入場者数81万2500人という盛況ぶりだった。

自動運転や燃料電池車等の次世代車の出展が目立つなか、筆者は西館2階スペースの「スマートモビリティシティ」での詳細な取材を行った。そのなかで注目したのが、ETC2.0だ。

 ETC2.0とは何か?

ETC2.0はその名の通り、高速道路での自動料金徴収システムであるETCの第二世代である。初代のETCとの違いは、GPS機能を持つことで自車の位置情報が分かり、さらに路車間での渋滞回避や安全運転に対する支援、さらに災害発生時に災害状況を通知するシステムを完備している。

こうした各種の支援システムについて、国はこれまで「ITSスポット」と呼んできた。ETC2.0とはETCとITSスポットの融合型なのだ。

 ITSスポット導入前の体験

ETC2.0を語る上で、ITSスポットに関する筆者の体験を紹介したい。

筆者はこれまで2010年後半に1回、2011年後半に1回の合計2回、国土交通省が報道関係者向けに実施したITSスポット説明会に参加した。その際、首都高速・西東京管理局・交通管制室を視察し、その後にマイクロバスに同乗して首都高速3号線と4号線を走行し、車内に置かれたモニターで各種サービスの実情を見た。首都高速内で事故発生件数が多い代々木出入り口付近で、前方に事故発生を想定した注意喚起のシミュレーション等、具体的な事例を紹介して頂いた。

このツアーの際、国からの説明ではITSスポットは2009年秋から整備が始まり、2011年3月までに全国1600ケ所に設置という。今回、東京モーターショー会場で国土交通省関係者に聞くと、高速道路での接地数は1600ケ所から増えていないという。

またVICS情報が都道府県をまたいで行えるというのが、ITSスポットのウリだった。ツアーの際にも、東京から名古屋方面に行く場合、首都高速から東名高速、または中央高速の道路状況の全体をVICS及び各道路事業者からの最新情報を基に解析し、モニター上に最適ルートを描いた。さらに国土交通省の関係者は、サービスエリア等でのWi-Fiの活用やドライブスルーでの電子決済にITSスポットの活用範囲を広げると説明した。

高度交通システムであるITS分野で日本は長年、ETCやVICS等の公共インフラ整備の実績で世界をリードしてきた。その正常進化としてのITSスポットに大きな期待がかかった。

だが、世の中の流れはけっして、ITSスポットの追い風にはならなかった。その原因は、スマートフォンとクラウドの急激な普及だ。スマートフォンのアプリによって、詳細な交通情報やナビゲーションが低価格、もしくは無償で提供されるようになった。その影響は車載器型のナビゲーションの販売を直撃した。高性能化と高価格が進んできたカーナビのトレンドが変わり、若い層を中心に低価格のカーナビへの需要、またはスマートフォンをクレイドルで車載ナビの代用とする人が急激に増えていった。車載器メーカーはITSスポットを高付加価値で高価格なナビゲーションに組込んだこともあり、スマートフォンによるトレンドの影響が大きかった。

2015年10月時点で、ITSスポットに対応したETCの出荷総数は約100万台。ETCの普及台数は6000万台を超えており、ITSスポットのサービス開始から約5年としては普及の速度はけっして早いとは言えない。

またITSスポットのウリのひとつである電子決済では、モバイルスイカ等による13.56MHzの短波HF波を利用したNFC(ニア・フィールド・コミュニケーション)が急激に広まった。クルマに乗車している状態でも、ドライブスルーで商品を受け取る際にNFCを利用することも十分考えられる。こうした点を踏まえて、ITSスポットによる電子決済の今後のあり方を検証する必要があった。

こうしてITSスポット周辺で起こったIT革新による社会変化を踏まえて、ETC2.0という新たなるスターティングポイントに立ったのだと、筆者は理解している。

今回、東京モーターショーで配布された国土交通省のパンフレットには、新たに加わる運転支援サービスの拡充案件がいくつか記載されていた。具体的には、①一時退出した場合でも、高速を降りずに利用した料金のままとする措置の導入(平成28年度より順次導入)、②圏央道利用について約2割引と圏央道を大口・多頻度割引の対象道路に追加、③トラック運行管理サービスの試行(平成27年秋試行)等が挙げられた。

 高齢ドライバー向けデバイスとしての可能性

話はやや変わるが、筆者は常々「ETC2.0を高齢ドライバー対策に使えるのでは」と考えている。先日、その点についてテレビの生放送で指摘した。

第44回東京モーターショー閉幕の前日、11月7日(土)の午前8時15分~午前9時28分。NHK総合テレビ「週刊ニュース深読み」に出演した。番組冒頭の今週のニュース全般を紹介するコーナーに続き、約45分間に渡る「深読み」のコーナーで、テーマ「どう減らす?高齢者の交通事故」について議論した。

10月28日に宮崎市の中心部で、73歳の認知症の男性が暴走し2人が死亡、4人が重軽傷を負う悲惨な事故が発生した。その他にも最近、高速道路の逆走や一般道路でのひき逃げ等、高齢ドライバーによる重大事故が増えている。同番組ではそうして事例を踏まえて、高齢ドライバーの交通事故をこれからどのように減らしていくべきかについて、芸能人のゲストや認知症研究を行う医師らと“井戸端会議”のような雰囲気で話し合った。

そのなかで、筆者は「高速道路の逆走防止にETC2.0の活用が研究されている」と発言した。ETC2.0は現在、自動料金収集の場合、周波数5.8GHz帯の電波を約4m幅で発信している。また旧ITSスポットのサービス領域でのデータ通信の場合、同じく5.8GHz帯の電波を約20m幅で発信している。東京モーターショーで意見交換した国土交通省の関連研究所関係者によると、こうした発信方法のなかで、逆走の際に別の幅で5.8GHz帯の電波を発信し、逆走している車両に通知、また逆走の接近を通常交通側に通知することは可能だという。ただし、通常交通側に対して逆走通知の電波が干渉する可能性も無視できず、今後さらに研究が必要だという。

筆者としては、国が65歳以上の高齢ドライバーに対してETC2.0の車載器を無料配布するべきだと考える。実効性の伴わない各種の補助金配布より、こうした安全性に直結する税金の投入をするべきだと思う。

また、ETC2.0に対応する道路側の発信器が全国の国道約1500ケ所に設置されており、匿名性を条件として国がプローブデータを収集している。ここに65歳以上の高齢ドライバーの走行履歴を当人の同意の元に非匿名性として、異常な運転行為を事前に把握することを今後検討するべきだと思う。

ETC2.0は、高齢者を含めて国民全体の交通環境を改善するために重要な機器である。

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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