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ITS業界記事 自動車メーカーも多数出展する国際福祉機器展!パーソナルモビリティでは、屋内外で共用するGNSS/IMES技術が広がるか?

 国際福祉機器展で注目される、様々なモビリティ

今年も、アジア最大級の福祉関連イベント「国際福祉機器展」(2016年10月12~14日:東京ビックサイト)が開催された。会場内には日米欧中韓などの各国から、多彩な最新の福祉機器が出展された。

福祉というと、一般的には、高齢者や身体の不自由な方に対する医療と介護に対するイメージが強い。実際、会場内には介護用ベッドや、病院や介護施設向けの治療カルテの管理システムなどに関する展示が目立った。

一方、「移動すること」に対する商品も数多く並んだ。最も目立つ存在だったのは、自動車メーカーだ。トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、スズキ、ダイハツはモーターショーのような大型ブースを構え、最新の福祉車両をズラリと並べた。車種別で最も多いのは、ミニバンだ。「ハイエース」や「キャラバン」などの大型ミニバンの場合、病院や福祉施設が所有して、施設利用者を自宅まで出迎えるために使う。後部のハッチ型ドアの内側に、クルマ椅子に乗ったまま乗車するための昇降機(リフト)が備わる。「セレナ」や「シエンタ」など、中型や小型ミニバンになると、クルマ椅子を利用する高齢者や、身体の不自由な方と共住している家族が日常生活のために使う。さらに小型になると、「タント」や「スペーシア」などの車高が高いタイプの軽自動車の福祉車両が用意されている。

その他、身体の不自由な方が自ら運転するために、両手でハンドルだけではなく、アクセルとブレーキ操作が行なえるものや、両足だけでハンドル操作まで行える機能を装備する量産車もある。なかでも人気なのは、マツダのスポーツカー「ロードスター」の福祉車両で、その周りにはいつも多くの人が集まり、装備の詳細を説明員に聞いていた。こうした特殊装備の製造方法は、自動車メーカーによって違いがある。ひとつは、外部の専門業者に特殊部品の製造を委託し、自動車メーカーからディーラーに納車された車両を専門業者に移送して、部品を装着するケース。もうひとつは、自動車メーカーの製造ラインのなかで、特殊車両の専用施設を併設するものだ。

 進化するパーソナルモビリティと、必要性が増す法整備

自動車メーカーのブースで、乗用車やミニバンに他に目立つ存在だったのが、スズキ「セニアカー」や、ホンダ「モンパル」などのハンドル式クルマ椅子だ。普通免許を持たない高齢者、または高齢になったので普通免許を各都道部県の警察本部に返上した方などが、自宅周辺の移動に使う歩行補助機器として全国に普及している。中国製や台湾製の製品もあり、なかには「セグウェイ」のように二輪で自立走行するものがあるが、これは公道での利用は認められておらず、私有地や施設内での利用に限られる。

また、今回の国際福祉展では出展されていなかったが、ホンダが開発した「小さな椅子」のような形状をした、パーソナルモビリティの「UNI-CAB」は、高齢者向けのみならず、大型商業施設や、博物館・美術館内での一般移動用として、一部の実証試験を含めて活用が始まっている。

こうしたパーソナルモビリティは現在、あくまでも「歩行補助」という位置付けであり、自転車、自動二輪車、そして四輪自動車のように、道路交通や車両に関する「義務付け」や「規定」がほとんどない。そうしたなか、電動クルマ椅子や、ハンドル式クルマ椅子を屋外で利用して、単独で転倒したり、または自動車など接触より、利用者が怪我をしたり死亡するケースが後を絶たない。詳しいデータについては、消費者庁では数年に一度、報告書として取りまとめているので、同庁のホームページを参照願いたい。

また、パーソナルモビリティについて、国は「なんらかの法整備を行いたい」と常々言ってきた。なかでも、6年前から全国各地で実証試験が行い、新しい車両規定の制定を検討している「超小型モビリティ」の枠組みに、パーソナルモビリティを組み込むという案がある。この分野について、筆者は長年に渡り取材を続けており、新たなる法整備に向けた多くの課題があることを承知している。そのうえで、パーソナルモビリティについては、高齢化社会に対する早期の対応策になり得ることもあり、早期に「既定の明確化」を行なうべきだと考える。

 パーソナルモビリティには、屋内外で共用できる位置測位システム(GNSS/IMES)が必然

パーソナルモビリティの法整備を進めるなか、是非とも装着の義務付けを行って欲しいのが、屋内外で共用できる位置測定システムだ。

屋外の位置測位システムでは、GPS (グローバル・ポジショニング・システム)などによるGNSS(グローバル・ナビゲーション・サテライト)を使うのは当然。また、屋内での位置測位では、Wi-FiやBluetooth、その他ではジャイロセンサーを活用するものなどがある。

そうしたなか、屋内外で共用できる位置測位システムとして注目が集まっているのが、準天頂衛星(QZSS)によるIMES (Indoor Messaging System)だ。屋内にGPS送信機を設置し、屋内にあるGPS受信機に対してGPSと同じ帯域でIMES信号を送り、位置測位を行なう。送信機は日立産機システムなどが、また専用の受信機はソフトバンクなどが販売している。ソフトバンクはモバイルネットワークとの連携を行っており、自動車関連ではホンダの研究所内で走行する実験車両などで実用化している。

そもそも準天頂衛星は、GPSを補完することを目的としており、準天頂衛星を製造する日系大手電機メーカーの担当者は「QZSS機とGPS機はほぼ同じ物」と証言する。よって、こうした屋内と屋外の両方でGPSが受信できる環境を作ることができるのだ。

ただし、ここで問題がある。使用はあくまでも日本国内であること。さらに、送信機の常設についてはJAXA(宇宙航空研究開発機構)への設置申請が必要なのだ。JAXAは米政府から、準天頂衛星に限り、IMESの使用を認められているからだ。米政府としては、アメリカ国内やその他の国や地域で、GPSと同じ信号を発信することに対して、慎重な姿勢を示している。
日本としては、せっかく日本独自の準天頂衛星を所有しているのだから、その恩恵であるIMESをより多くの機会で有効活用するべきだ。そのなかで、パーソナルモビリティでは、高齢者や身体の不自由な方に対する安心安全を確保するために、IMESの義務化が望まれる。

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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