日刊水産経済新聞 2009.2.23掲載 -桧山のかんどり連載レポート1-

ソナーが支える省エネ型イカ釣漁業

集魚灯に頼らぬ操業へ未来の燃油高にも対応

求められる省エネ化

新川常務

新川常務

「重油なのにガソリンを炊いているような価格だった」、「発泡箱代も高く、全く利益が出なかった」。北海道桧山地区の漁師らが厳しい表情で振り返る。昨年、漁家経営を直撃した燃油高騰―。

漁船用A重油の価格は約5年前から上昇局面に入り、昨年半ばにはリットル100円の大台を突破した。漁船漁業は致命的なコストアップを強いられ、7月15日には全国一斉休漁という異例の事態が巻き起こった。

その後、重油価格は反落、現在は70円前後の水準に戻っている。

しかし、漁師たちの中からは不安が消えない。「また燃油価格が上がるのではないか」。

漁協関係者は「将来に備え、今から対策をとっておく必要がある」と指摘する。その一策としてこの地区で注目されているのが、省エネ操業の実現に大きな効力を発揮する漁労機器、ソナーである。

イカ釣でにぎわう町

北海道の南西部、渡島半島の日本海側に位置する桧山地区。海岸線には美しい砂浜と断崖や奇岩が連なり、趣きのある独特の景観を見せる。

桧山管内の各浜を管轄するひやま漁協本所

桧山管内の各浜を管轄するひやま漁協本所(乙部)

管内を管轄するJFひやま漁協(市山亮悦組合長)は、7年に近隣の8漁協が合併して発足した。現在、乙部の本所と10地区の支所・出張所で構成し、組合員数は合計1060人(20年4月現在)。主な漁業は夏場の小型イカ釣と、冬場のスケソウ延縄で、この2つで組合の取扱金額約62億円(19年度)の4割を占める。イカ釣の盛漁期には、南方からの外来船を含めて、200隻近くが集結し、「イカ釣基地」としての賑わいを見せる。最近ではヒラメやサクラマスの稚魚・幼魚放流事業、アワビの養殖などにも取り組み、地場資源の育成を図っている。

組合運営について新川正己常務は、「浜とのコミュニケーションをしっかりと持ち、組合として浜のために何ができるかを考えることが重要」と話す。ソナー導入についても、この「コミュニケーション」が、きっかけをつくることになった。

浜との対話が契機に

集魚灯を用いるイカ釣漁業は、他の漁業よりもコストに占める燃油代の割合が高い。イカ釣を主力漁業に据える同漁協でも、数年前から始まった燃油価格の上昇は頭の痛い問題だった。そうした中、4年前に国が燃油対策のための補助制度を実施する方針を決定。新川常務はこの制度について知ったとき、「浜にきちんと伝えなくてはならない」と思い、管内の全地区を回って、組合員に制度の内容を説明したという。「何をやるにしても、一度浜に下ろし、浜の意見を集約することが重要だ」。

説明をしていく中で、漁業者側から制度活用によるソナー導入の案が示された。これを受け、「やるだけやってみよう」と取り組んだ結果、これまでにイカ釣船20隻あまりにソナーが導入された。

効率的にイカを発見

ソナーとは、船底から海底に向け超音波を発し、その反射波から魚群の分布状況や密集度などを解析し、表示する装置。魚群探知機(魚探)が漁船の真下を探索するのに対し、ソナーは漁船の周囲360度をより広範囲にわたって探索することができる。

ソナー画像が漁場での道しるべとなる

ソナー画像が漁場での道しるべとなる

「ソナーで魚群を効率よく発見できるようになったことで、集魚灯を点灯せずにイカを釣る『かんどり』ができるようになった。この燃油削減効果が非常に大きい。すでに集魚灯を取り外している船もいる」と、新川常務はソナーの効果を説明する。また、「魚探の場合は船が魚群の上にいなければ探知しないため、船は群れを探して走り回ることになる。しかし、ソナーがあれば、魚群までスムーズにたどり着くことができるので、漁場探索にかかる航行コストもカットできる」。もちろん、「燃油消費量の削減による、地球環境の保護というメリットもある」。

ソナーの高い魚群探索能力が、集魚灯を煌々と点ける、従来のイカ釣漁業の形態を転換させたといえる。燃油高騰にも対応した省エネ操業の好例として注目したい。

次回からは実際にソナーを利用する漁業者の話にスポットを当て、具体的なソナーの利用法、効果などを紹介する。

(つづく)