2012年より2018年にかけて、国際航海に従事する500トン以上の旅客船、及び3000トン以上のタンカー、貨物船に対し段階的にECDISの搭載が義務化されます*。(義務化スケジュールの詳細は下図を参照ください)
* 搭載義務化の期日より2年以内に廃船となる船舶に於いては、主管庁の判断により搭載義務が免除されることがあります。
ECDIS搭載義務化スケジュール
2008年開催の第54回航行安全小委員会(NAV54)にて、国際航海に従事する500トン以上の旅客船と3000トン以上の貨物船に、2012年以降段階的にECDISの搭載を義務づけることが合意されました。そして、2009年の第86回海上安全委員会(MSC86)にて、ECDIS義務化に関するSOLAS条約の改正案が採択されました。
ECDISを船舶に搭載するにあたり、船舶が登録されている旗国海事監督官庁による承認が必要となります。この承認は、IMOのECDIS性能基準に適合していることを証明するため、旗国より承認された型式認定、及びその他認定手続きによって行われます。
旗国海事監督官庁は、適切なECDISのバックアップのアレンジが為されているか否か、航海に必要な最新の状態に保たれた電子海図を備えているか否か等を審査します。また、旗国によっては、航海士がECDISの運用に関して十分な知識と理解を備えていることを要求するところもあります。
ECDISを搭載し活用することによって、以下の様々なメリットを享受することができます。
航路計画を、紙海図で行う場合に比べ格段に簡素化することができます。喫水情報や、危険な海域、航海を行う際、特に注意の必要な情報などを考慮しながら、航路計画をたてることで、安全航海に寄与します。また、ECDISに接続された様々なセンサーのデータを使用し、航路の最適化を画面上で迅速に行うことができます。
海図の情報を常に最新のものに保つことは、航海を計画する上での、重要なタスクの一つです。ECDISに搭載されているENC、RNCでは、紙海図で行う際と比してこれを簡単に行うことができます。海図情報のアップデートは、下記の手順で行うことができます。
上記と同じ方法で、衛星通信回線を使用して、追加チャートを購入することも可能です。
* 外部ネットワークと接続する際には、ネットワークゲートウェイを装備する必要があります。
航行中、ECDISは、船舶が計画された航路からずれていないか、また浅瀬等、危険な場所に近づいていないか監視を行っています。他の航海機器やセンサーからのデータとチャートデータを照合して、航海機器からのデータに不整合が無いかを確認し、危険海域に近づいた際や、航海データに不具合を認めた場合、警告を発します。また、船舶が浅瀬等、特別に注意が必要な海域に近づいた場合、当直航海士に通知するように設定することも可能です。また、ECDISは、航海中に蓄積された航海情報やチャート使用履歴などを記録し、後日参照することも可能です。
ECDISで使用する公式電子海図には次の2種類があります。航海用電子海図(ENC)と航海用ラスター海図(RNC)です。ENCはS-57という海図データ転送形式に基づいて編集されています。RNCは公式紙海図をスキャンしたデジタルラスター版の海図のことを言います。それらの電子海図は、各国の水路局、その他の関連政府機関により発行されており、公認の電子海図販売業者、代理店によって販売され、船舶はその公認の電子海図販売業者、代理店と契約することで常に最新の状態に保つことができます。全ての旗国事監督官庁は、ENCの使用を認めていますが、RNCについてはその限りではありません。よって、船舶が所属する旗国事監督官庁にどの電子海図を認可しているか確認を行なってください。
また、公式電子海図のほかにECDISは、非公式海図又は私製海図と呼ばれる電子海図を使用することもできますが、SOLAS船舶では、それらの非公式海図をベースに航海を行なうことは認められていませんので御注意ください(あくまでAids to Navigationという位置づけになり、公式電子海図もしくは公式紙海図が航海に必要になります)。航海用に使用する電子海図を選択する際には、旗国事監督官庁及び電子海図販売業者、代理店に御相談ください。
FEA-2107/FEA-2807 FMD-3200/FMD-3300
SOLAS条約対象船舶は、常に最新維持された公式航海用紙海図及び航海用刊行物を備えておく必要がありますが、これらの代用品としてECDISを採用することも可能です。
ECDISを採用することによって、海図情報の管理、更新が容易になり、また様々なセンサー機器とネットワークを構築することで、浅瀬への接近を事前に知らせる多様なアラーム機能等、航海の安全に寄与する様々な機能の利用が可能となります。但し、装備するECDISは、船舶が登録されている旗国海事監督官庁による承認が必要となります。この承認は、ECDISがSOLAS搭載要件に合致しているか否か、航海に必要な公式電子海図を備えているか等が検査項目となります。
また、適切なECDISのバックアップのアレンジが必要となります。最新の紙海図を装備するか、独立した電源に接続され、GPS測位情報を別途入力可能なNo.2 ECDISを装備する必要があります。No.2 ECDISを装備することで、航海のペーパーレス化を実現することも可能となります。
スタンドアローンECDIS構成例
公式かつ最新維持された紙海図を備える必要があります。
デュアルECDIS構成例
ペーパーレスナビゲーション
ECDISは、レーダーと接続することで、ARPA/TT情報やレーダー映像を重畳表示することができます。また、設定された航路計画情報を、レーダー画面上に表示したり、ECDISに、ARPA/TT情報やレーダー映像を重畳表示することができます。ECDISとオートパイロット(HCS)を組み合わせることでトラックコントロールシステム(TCS)を実現、ECDISからの操舵コマンドをオートパイロットが遂行します。
操舵中には、ECDISとレーダーの画面上には操舵の計画半径を示す曲線EBLが表示されます。曲線EBLを使用することにより、旋回を開始する前に、旋回を開始するための最適な位置を選択することができます。また、計画航路に対して意図した操船がどのように行なわれているかを監視できます。
デュアルECDIS+トラックコントロールシステム
ペーパーレスナビゲーション
航路計画は、当直業務を行なう航海士の航海業務を妨げないといった条件の下、バックアップ用のECDISを活用して立てることができますが、別途ルートプラン用ECDISを装備し、航路計画を立てることも可能です。
シングルECDIS+ルートプランニングECDIS
公式かつ最新維持された紙海図を備える必要があります。
デュアルECDIS+ルートプランニングECDIS
ペーパーレスナビゲーション