日刊水産経済新聞 2008.9.3掲載

目覚しい効果を発揮

高い探索能力で漁獲量を維持・向上

皆さんはソナーという商品をご存知ですか。大間のマグロ釣ですっかり有名になり、ご承知の方も多いと思います。自船の直下を観る魚群探知機とは違い、自船の周囲360度方向を観ることができます。はるか遠方から魚群や海底の状況を把握することができる訳です。魚探と比べ、飛躍的に高い探索能力を誇っていて、漁船漁業の漁獲向上には欠かせない商品なのです。

ソナーの種類もさまざまで、大きく分けて3種類あります。魚群探知機の振動子に機械的に角度をつけ、6度ずつ旋回させることによって、自船の周囲360度方向を観るPPIソナー。最大45度方向を同時に観ながら旋回し、遠方探知も含めPPIソナーより探索能力に勝るセクタースキャニングソナー。全方向を同時に観ることで、前述のソナーと比べて最も探索速度が早く、またハイパワーによって遠方探知に優れ、最も探索能力が高いスキャニングソナー。方式、周波数、探索能力によって、種類も価格もさまざまです。

イカ釣り、旋網漁などの燃油高騰対策で成果

このソナー、実は漁家経営に大きな打撃となっている昨今の燃油高騰への対策に有効であることをご存知でしょうか。例えば燃油消費量が多いイカ釣漁船。主流である夜イカ釣は、集魚灯を焚(た)いてイカを集めて釣り上げる漁法であるため、経費に占める燃油の割合が非常に高い特徴があります。ほかの漁法に比べ、燃油高騰による影響が大きい訳です。周囲の船より光力が劣るとイカが灯に付かないため、単独で光力を落とすことによる省エネは図りにくいのです。この打開策として登場するのが前述のソナー。まず、燃油消費量が多い夜イカ釣から、灯を焚かない省エネ漁法である昼イカ釣に転換します。ただし、そのままでは集魚できなくなって漁獲量が減少しますので、減った分を補うため、広範囲を探索できるソナーを装備する船が増えているという訳です。この漁法だと目覚しい省エネ効果を得られます。気になるのは、転換前後の漁獲量の変化ですが、完全に昼イカ釣に転換した場合でも、夜イカ釣と遜(そん)色ない漁獲を上げているとか。

旋網漁業でも燃油高騰対策にソナーを活用した例があります。船団の中で、従来は2隻の探索船を使って探索していましたが、燃油高騰の影響を受けて打開策を模索。2隻での探索から1隻での探索に転換することを試みました。こうすると、燃油消費量は激減させることができます。ただし、そのままでは探索力が半分に落ちてしまうので、それを補うものとして登場するのが新型ソナーです。最先端の技術革新が進む現在では、何と最大5000メートル遠方からでも魚群探知が可能なスキャニングソナーがあります。探索力が従来機より格段に向上している訳です。これを使って探索船を減らすことで、探索力減退を補ってあまりある効果を発揮させ、省エネ操業に役立てているのです。

燃油高騰への対策として、省エネ機器としてソナーを用いるという発想の転換も面白いと思いませんか。