世界一周への挑戦 ダブルハンドヨットレース “GLOBE 40”。夢の達成に向けて日々チャレンジを続けたチームMILAIの記録。世界一周達成おめでとうございます! 世界一周への挑戦 ダブルハンドヨットレース “GLOBE 40”。夢の達成に向けて日々チャレンジを続けたチームMILAIの記録。世界一周達成おめでとうございます!

LEG 3
Mauritius~Auckland

レース : 9月11日~10月7日 日数 26
6923海里

冬の南インド洋をひたすら走ることになる過酷なレグの1つです。オーストラリアの南側を通過し、ニュージーランドを目指します。

2022年9月29日
モーリシャスから出発、南の高緯度の寒い海へ


15m/sほどの風が吹き、船外は極寒の世界


キャプテン鈴木さん


Leg3に乗船するルカさん

Globe 40 第3レグはモーリシャスから、オークランド(ニュージーランド)までを走る、6,200マイルのコースです。南インド洋の西風を掴むために、大きく南下してから東に向かうため、実際は7,000マイルほど走る長距離セーリングとなる予定です。
今回の相棒はイタリア人のルカ・ロゼッティ。彼は26歳のセーラーで、私が外洋セーリングにのめり込むきっかけとなった、2019年のミニトランザット(単独大西洋横断ヨットレース)に出場し、その頃からの仲です。
シャイですがとても真面目で優しく、彼と一緒にいると気持ちが落ち着く、良い相棒です。

9月11日、カラッとした晴れ空の下モーリシャスをスタートしました。いつもながらスタートの日はナイーブな気持ちになります。これから始まる30日以上の過酷なレースを目の前にすると、仕方がないことだと思っています。でもこれはスタートの瞬間まで。レースがスタートすると一気に気持ちが入れ替わり、力が入ります。
レース艇団はまとまって、まずは南下をします。

徐々に東に向かいながらも、およそ1週間南下をしました。モーリシャスでは25℃あった気温も、ここでは夜は10℃以下に気温が下がります。
ストーブやヒーターが無い船内はハッチを閉めても冷え込みます。外は15m/sほどの風が吹き、船外は極寒の世界です。
常に西風が吹くこの海域は、うねりがとにかく大きいことに驚きました。波長の長いそのうねりは、まるで山脈の様にはるか遠くまで繋がっています。

船の周りにはアホウドリが常に飛び回っています。おそらく私たちを漁船と思って付いてきているのでしょう。残念ながら彼らにあげる魚はありませんが、船を周回し続ける鳥を見ていると、こんなところにも生き物はいるのだと、不思議な気持ちになります。

スタートして2週間が経過、この1週間南緯40度前後の寒い海を走っていましたが、ここから西オーストラリアのウェイポイント(通過地点)を目指して一旦北上します。このウェイポイントは安全上の都合で設置されているものです。南の高緯度を走り続けた方が、距離が短くなるので目的地には早く到着できますが、南緯40度まで行くと私たち以外に航行している船はほぼなく、緊急時の対応が取りづらいためです。

レース艇は再び北上を始め、西オーストラリアのエクリプス島沖を目指します。
北上を始めると当然ながら気温が上がり、久々に上着を脱いだり、湿った服を乾かしたりと久々にリフレッシュすることができました。

9月29日現在、エクリプス島まで50マイルのところまでやってきました。今夜にはウェイポイントを通過する予定です。
東に進むにつれてタイムゾーンも変わっています。モーリシャスではUTC+4でしたが、現在地はUTC+8のところまでやってきて、日本に近づいていることを実感しています。(実際は遠いですけどね。笑)

気温や時間、そして出会う生き物たちが移動するごとに変わってくるので、自分が地球の上を進んでいることを感じる今日この頃です。
併せて地球の大きさも実感しています!

西オーストラリアからオークランドまでは、残り2週間ほどの航海の予定です。難所がいくつかあるので、気を引き締めて後半も頑張ろうと思います!

2022年10月14日
大西洋とインド洋の水は少し味が違う?長距離航海のヨット船内生活は?


アルファ米と日本フランスのレトルトはメインメニュー


小さいヨットでも複数の発電系統を使用されている。その中の一つは水力発電。


ソーラーパネルの発電

1か月以上360度海しかない環境では、どう過ごしているか。今回、キャプテン鈴木に第3レグでの船内の暮らしぶりを詳しく聞きました。

Q1:長距離航海中、普通何を食べていますか?
船上ではフリーズドライかレトルト食品がメインです。というのも、調理器具はお湯を沸かすためのジェットボイルしかないからです。
日本人の私はアルファ米+日本フランスのレトルトがメインです。
私のお気に入りは日本のカレーライス。元気だそう!という時に食べています。
イタリア人のルカはパスタや煮込み料理をよく食べていますが、最近は日本食も好きになりました。ルカも日本のカレーライスが大好きです!
タンパク質やビタミンは、豆腐やサラミを食べたり、フルーツで補っています。

Q2:30日間の航海のため、どのくらいの食料、水を用意していますか?
いつなにがあるかわからないので、船上には日数の2倍の量の食料を積んでいます。
そのため通常は食べ放題です!笑
飲料水はコース上で一番近い陸地までもつ分を積んでいます。第3レグですとオーストラリアになるので、2週間分として100Lの水を積みました。
ミライ号には造水器があり、海水をろ過して飲料水を作ることができます。この造水器は1時間に4Lほど真水を作ってくれ、毎日日々の飲料水を作っています。
そのためこの100Lはまだ飲んでいません。フィニッシュまでの日数が確定してから飲み始めることになりますね!
気のせいかもしれませんが、大西洋とインド洋の水は少し味が違う気がします。インド洋がお気に入りです!笑

Q3:鈴木さんとルカさん、好きなメニューは?
私はもちろんカレーライスです!
ビーフカレーやグリーンカレーなど多くの種類のカレーを積んでいて、選ぶのも楽しみのひとつです。
ルカのお気に入りは日本のラーメンです。特に味噌ラーメンが大好きです!

Q4:船の上の生活が長い中で、健康や体型維持などどのようなことに気を付けていますか?
限られたスペースでの生活が続くので、とにかく運動不足になります。そのため船内でスクワットや腕立て伏せをしたりしています。
それでも運動不足ですね。万歩計を1日持っていましたが、なんと600歩でした。各寄港地でしっかりトレーニングすることが、大切です!

Q5:船のキッチンはどのようになっていますか?
お湯を沸かすジェットボイルひとつで、全ての食事を作っています。船が傾いても大丈夫なようにジンバルになっていて、これが僕らの生命線です。

Q6:電気はどうしていますか?
発電は3系統あります。ディーゼルエンジン、ソーラーパネル、そして水力発電です。
航海中の90%の電力は水力発電を頼っています。水力発電には船のスピードが必要です。風がない時だけ、エンジンをかけて発電します。日中はソーラーも良く発電してくれますね。
ミライのディーゼル燃料は、ユーグレナ社のバイオ燃料を使用しています。
このようにミライの航海はカーボンニュートラルを目指しています。

Q7:トイレは?
トイレはバケツです!笑。バケツにバイオ分解される袋を被せて使用しています。
レースをするため少しでも無駄を省くために、トイレは設置していません。
コックピットにバケツを出して、晴れた日は海鳥やイルカと会話をしながら、荒れた時は波を被りながらの屋外トイレです。正直なところ過酷です。笑

2022年10月28日
第3レグフィニッシュ、距離で言うと地球を約半周しました!


オークランドに到着後、長旅で酷使したMILAI号のキール、ラダー、マスト、セイル全てを外し、メンテナンスしました

西オーストラリアを越し、MILAI号と私たちはグレート・オーストラリア海に入りました。
発達した低気圧を通過するため風速20m/s以上の向かい風です。波が悪くMILAI号はこれまで体験したことがないくらい、激しく波に叩きつけられます。叩きつけられる度に、大きな音と振動が船に響きます。「頑張れミライ」と何度も船に話しかけました。

無事に嵐を越し、バス海峡に入ります。
先行するセック・ハヤイとの距離を徐々に詰め、バス海峡の出口ではついに追い抜くことができました!

オーストラリアを抜けて、次はタスマン海。いよいよニュージーランドに向けてファイナル・アプローチです。ここでもまた低気圧の通過でタスマン海は強風が吹き荒れていましたが、僕もルカもMILAI号も、最後の一踏ん張りです。

セック・ハヤイとの攻防戦続けましたが、一歩足りず約34分差で10月16日にオークランドにフィニッシュしました。モーリシャスをスタートしてから35日間のレースでした。長く辛い、でもやり甲斐のある充実したレースとなりました。

長旅で酷使したMILAI号はオークランドに到着後、メンテナンスに入りました。
今回、アンドレアが先にオークランドに到着をして、メンテナンスの段取りを整えていたため、すぐに作業に入ることができました。

キール、ラダー、マスト、セイル全てを外し、メンテナンスしました。距離で言うと地球を約半周し、ここでしっかりとメンテナンスできたので、安心してフランスまで乗り越えることができると思っています。