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グランドマスタークロックとGPS(GNSS)タイミング技術

  • タイミング市場

ネットワーク内の高精度な時刻同期を可能にする「グランドマスタークロック(GMC:Grandmaster Clock)」とその必要性、また、同期性能のカギをにぎるGPS(GNSS)タイミング技術についてご紹介します。

*GNSS (Global Navigation Satellite System)
全地球航法衛星システムとも呼ばれ、衛星の信号を受信して測位するシステムの総称です。
米国のGPSもその一種で、他にもロシアのGLONASS、欧州のGalileoなどがあります。

証券取引市場に必要なGPS(GNSS)技術、ネットワーク時刻同期技術?

一日に何度も証券取引の売買を繰り返す、いわゆるデイトレードやスキャルピングトレードをおこなうアメリカ人・ギルバートさんはある日、ふと思いました。
「取引価格は、1秒未満などほんのわずかな時間で変動するため、数秒や数分単位の短期間での売買も繰り返す自分にとって、通信のタイムロスは取引損得の金額に大きく影響する。通信のタイムロスを実感したことはないが、自分が契約している証券会社の通信環境の管理は大丈夫だろうか?」

そこで自分が契約している証券会社における通信タイムロスについて調べてみました。すると、なんとミリ秒単位の高速かつ頻繁に売買を繰り返すサービスまで利用できるほど通信状況が管理されているとのことで、ギルバートさんは驚きました。取引における通信タイムロスは「レイテンシー」と呼ばれるようで、「レイテンシー」が非常に少ないことをアピールしている証券会社もありました。

「ミリ秒単位での売買なんて、すごい世界もあるものだ。」
そんなことを思いながら、今度は通信状況の管理について調べていくと、ギルバートさんは気になる記事を発見しました。なんと、ミリ秒やそれ未満の単位(マイクロ秒、ナノ秒)でタイムロスを検知するために、GPS(GNSS)が使用されているというのです。
「カーナビやスマートフォンで位置を調べるあのGPSが、タイムロスの検知とどう関係している?」
読み進めていくうちに、GPS(GNSS)衛星にはとても精密な原子時計が搭載されており、GPS(GNSS)受信機を使えば世界共通の絶対時刻である協定世界時(UTC)を高精度に取得できることが分かりました。 どうやら、高速での取引がおこなえる証券取引所、証券会社、金融サービス企業などでは、GPS(GNSS)受信機を使ってUTCを取得し、さらにネットワーク内での時刻同期システムも組み合わせてレイテンシーを常に監視しているとのことでした。
ギルバートさんはこれらの記事を読むことで、安全で正確な取引を行える環境でトレードできていることに安心しました。

ネットワーク内での時刻同期(NTP、PTP)

世の中には、上記のようにネットワーク内での高精度な時刻同期を必要とするシステムが多く存在します。携帯電話の基地局や、電力監視システムなど我々のインフラ設備にも多く活用されています。
時刻同期の方法としてポピュラーなものにはNTP(Network Time Protocol)があります。米国デラウェア大学の David L. Mills 博士らが主体となって策定されたNTPは時刻同期のプロトコルとして、現在もさまざまな場所で利用されています。
その後、NTPよりもさらに高精度な時刻同期を必要とするシステムのために、PTP (Precision Time Protocol)が策定されました。PTPでは、LAN (Local Area Network)につながった機器間での時刻同期をおこないます。その仕様は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)という機関によりIEEE-1588として定められています。IEEEとはアメリカに本部を置く電気・電子分野における世界最大の専門化組織で、工業技術の標準化団体としての活動を行っています。

PTPのカギを握るグランドマスタークロック(GMC:Grandmaster Clock)

PTPによるネットワーク時刻同期システムは、「基準時刻の提供元であるマスター機器」と「マスター機器とPTP通信をおこない、基準時刻に同期するスレーブ機器」とで構成されます。ネットワーク内の各スレーブ機器が、このマスター機器の基準時刻に一斉に同期することで、システム全体の時刻同期を実現します。このマスター機器の役割として登場するのがグランドマスタークロック(GMC:Grandmaster Clock)で、上記例の証券取引業界にも活用されています。

PTPによる時刻同期システムは、基準時刻の精度がシステム全体の同期性能に大きく影響します。高精度であることはもちろんですが、その精度を安定して保てることが非常に重要で、グランドマスタークロックを選ぶポイントにもなります。

グランドマスタークロックの基準時刻源として最適なGPS(GNSS)基準周波数発生器

グランドマスタークロックに搭載される時刻源には、タイミング用途に特化したGPS(GNSS)受信機が有効です。GPS(GNSS)衛星が持つ高精度な時刻に常に同期できるため、高精度な基準時刻が得られるだけでなく、定期的な時刻校正の必要がありません。
しかし、注意しなければならないのはGPS(GNSS)信号が何らかの理由で途切れた場合です。例えば、妨害波や落雷によるアンテナ故障などです。グランドマスタークロックは、こういったGPS(GNSS)信号が途切れた状態(ホールドオーバ状態)でも高精度な基準時刻を維持しなければなりません。
そこで登場するのがフルノのマルチGNSS基準周波数発生器GFシリーズです。GFシリーズは、OCXOなどの発振器を搭載して高精度・高安定の周波数(10MHz)とタイムパルス(1PPS)を出力するだけでなく、ホールドオーバ状態でもその精度を維持できる機能を備えていることから、グランドマスタークロックの用途でも採用いただいております。
そのラインナップには、世界最小クラスのサイズで低コストを実現したGF-8801~GF-8803や、世界最高クラスのホールドオーバ性能かつ低位相雑音を実現したGF-8805などを取り揃えております。お客様の用途に応じてサイズや性能から選択することができ、グランドマスタークロックはもちろん、各種無線通信やネットワーク通信、放送局などの時刻源(タイミング源)や、原子発振器の置き換え用途にも活用されております。
GF-88シリーズはいずれも、GPS/GLONASS/QZSS/SBASの同時受信に対応しています。

技術 GPS/GNSS基準周波数発生器[GPSDO、GNSSDO]とは(概要、用語)

受信機の障害対策

GNSSに起因する代表的な障害について、それぞれ技術白書をご提供します。
個々の障害に対して、受信機側ではどのような対策をしているのか、効果の程度、製品の選び方などを時刻同期専門のエンジニアが図表を交えながら解説します。
初めてGNSS受信機をご検討されるお客様はぜひ目をお通しください。

  1. マルチパス
    技術白書:市街地で世界最高水準の時刻精度
  2. ジャミング(妨害波)
    技術白書:GNSSジャミング(妨害波)への対策について
  3. なりすまし(スプーフィング)
    技術白書:GNSSなりすまし信号への対策について
  4. GNSS信号の受信中断
    技術白書:GNSS受信が中断した時の対策『ホールドオーバ』について

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イチからわかるネットワーク時刻同期

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5Gモバイル通信を支える時刻同期の世界をご紹介します。

  1. 時刻同期とは
  2. 基準時刻の取得方法
  3. 時刻同期の方法
  4. ソリューション選定のポイント
  5. 時刻同期の市場展望

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