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建設DX関連記事 【連載】AIの活用でDX推進を成功に導く①
~自社業務のブラックボックスは何処にある?~

日常のさまざまな場面で、AIが活用されるようになりました。「AIが人間の仕事を奪う」といった脅威論が広がった時期もありましたが、急激な人口減が進む日本社会においてAIを効果的に活用することは、今後の業務の成否のカギを握る要素になりつつあります。激変を迎えつつある建設業界において、AIを効果的に活用していくには、何を知っておく必要があるのでしょうか。AIを通じて社会課題や顧客の経営課題の解決を図る株式会社エクサウィザーズ社(東京都港区)の直野廉(Robot企画グループAIコンサルタント ビジネスディベロップメントリード)、川西亮輔(Robot AIグループロボットエンジニア)両氏に、建設DXジャーナル編集部が伺いました。

 社会課題という「大きな山」の入り口を整理する

編集部:御社は「AIを用いた社会課題解決を通じて幸せな社会を実現する」とのミッションを掲げています。どのような事業を展開しているのか、お聞かせください。

直野氏:社会課題とひと口に言っても、実際には広いと思います。その大きな山をいきなり登り始める一歩手前の作業として、企業が考えている経営課題に紐づく部分を、AIを利活用しながら解決するお手伝いを提供しております。

その際、我々はAI導入を図る前段から見ています。お客さまが課題として捉えていることの真因がそもそもどこにあるのか、またそのことが果たして経営層が考える経営課題の指標に対してマッチしているのかといったところを、まず整理させて頂くことが多いです。そのうえできちんと要素分解した上で、開発アイテムとして並べていくことになります。

例えば、小売業などで勤務シフトを作るのが大変だというお悩みがあったとします。直近1ヶ月にどれくらいの作業を行ったかを分析してみると、実は8日間ぐらいかかっていた。そこをなんとか効率化したい場合は、AIに最適化という技術があるので、作業を省人化するお手伝いをさせて頂くことができます。

(左)直野氏、(右)川西氏

編集部:そうしますと、実際のAI導入に至るまでに、やることがかなりあるのですね。お客さまは、自分が課題を抱えていることは分かっているものの、具体的にどこが問題なのかが分からないというケースは、多いのではないですか。

直野氏:そうですね、言葉にし切れていないケースは多いですね。現場の方のお話を色々と聞きながら、その内容の最大公約数を捉えた場合に現場起点ではおそらくこれが重要となる課題ではないかということが浮かび上がってきます。例えば、品質検査の際に見ている課題が、経営側のKPI及びKGIに照らし合わせてきちんとマッチしているかというポイントをリストにして確認します。

マッチしていないケースでよく見られるのは、経営層がコスト削減を求めていて、「この工程は重要ではないだろう」と想定しているのに対し、現場サイドから見ると実は対象工程が非常に重要で、無くしてしまうと品質が担保できなくなってしまう、つまり製品の品質を左右しているという状況が顕在化していないような場合です。

その不一致となっている状況を繋ぎ込んでいく為に、何が課題なのかというポイントをさらに掘り下げていきます。経営層がその重要性を捉えきれていない工程をいきなり断捨離してしまう前に、そのポイントを双方の観点で可視化するのです。ここをアイテム化する際に必要となるのがリアルワールドの環境のデータ化、最近ではデジタルツインと呼ばれている概念です。ここにおいて重要となる要素技術がAIとなります。

編集部:ここで、AIがつながるのですね。

直野氏:そうですね。データを元に、例えば売上にきちんと関連しているかどうかや、コスト削減に寄与するかといった点を、我々の方で見える化致します。もしデータが存在しなければ、データを作っていくような作業もさせて頂きます。

先ほど挙げたようなコスト削減を目指す場合、何がどれだけ時間を要しているかを見える化致します。ここでの課題は、現場では日々の業務に忙殺されているのに対し、経営者としてはどうやってここのポイントを省力化していくかです。

現場の方々の勤務シフトと生産金額を照らし合わせていくと、1ヶ月当たりの平均ののべ生産数と、人の行き来がわかります。ここから、売り上げに寄与している要素なのかどうかを関連付けることで、この工程は本当に必要なのかどうかを判断する材料を提供できるのです。

 AIは課題を解決するための手段である

編集部:コンサル要素も強いのですね。

直野氏:そうですね。業務を通じてとても大事だなと感じているのは、まずは全社を通して俯瞰して注力すべき課題は何なのかをきちんと見据えて、一緒に取り組んでいくことをしなければならないということです。

昨今はDXの重要性が叫ばれているのですが、会社が抱える課題について経営層と現場の両者がきちんと共通した目線に基づいて始めることが大切です。どちらか一方が違う考えのまま進めてしまうと、どこか他人事になってしまうのですね。一方、経営層と現場が認識を共有したうえでDXを進めて成果が出ると、自信を持って前向きに進む機運が高まることも多いですね。

AIはあくまで手段にしか過ぎないので、オペレーション変えることで課題が解決し、結果としてAIが無くても済むのであれば、我々としては良いと考えています。AIが目的となるべきではないからです。AIないしロボットがあくまで手段として、課題に対して真に合致しているかという点を、我々としては大事にしております。これまで我々はAIまたはロボットが目的化してしまったが故にPoCから進めないという事例を数多く目にして参りました。その為この点は特に重要視している所です。

編集部:大変雑駁な質問で恐縮ですが、AIとは何なのでしょうか。AIについて最低限、知っておくべきことはなんでしょうか。

直野氏:我々がよく申し上げているのは、AI自体が本当に何でもできるということではなくて、人が頭の中で描いているようなことを、いかに再現するかというところに、重きが置かれているのです。

AIの定義自体が、人によって異なるという面も実はあります。当社で提供しているのは、たとえば機械などが、人間のように感知して理解して、動いて学習していくといった一連の動きを実現するためのAIですね。

川西氏:AIというと、コンピュータがビッグデータを使って自動的に学習していくといったイメージがあるかもしれません。しかしAIがどのように学習していくかといった面は実は、すべて人間が設計をしているのです。

したがって、まずはAIを使って何を解きたいのかという点を明確にしておく必要があります。そうでないと、その先に進めないのです。まずは課題に対する解像度を上げていくと良いのですが、お客さまの社内だけで掘り下げるのは難しい部分があるので、むしろエンジニアの立場としては、課題を率直に伝えていただくと良いと思っています。解像度を上げるために、「御社でこういうデータを取れますか」というような提案もできるようになります。

 手書きの黒板に書かれた内容も、AIに必要なデータかもしれない

直野氏:我々が普段、訪問する工場の現場では、黒板や紙を使っているところがかなりあります。黒板ですから、古くなった情報は消されて残りません。もしそのデータが残っていれば製造条件を決める、もしくは制御などをするときに、手がかりになるはずなのです。手書きですと、文字や内容の間違いも生じやすいです。

また、我々がデータを見たときに、違和感のようなものを感じることもあります。我々が第三者だからこそ、申し上げられるところかなと思います。

あるとき、バックホーの事故の傾向を調べられないかというご相談がありました。お客さまとしては、事故をどうやって減らすかという点に重きを置かれてAIの導入を検討されていたのですが、事故が起きたときのデータを紐解いてみると、発生時刻はお昼前に多く見られました。お昼前だからお腹が空いており、早く作業を切り上げたいななどと考えて集中力が途切れたのではないかといった示唆や考察が導かれます。

編集部:その意味では、シンプルなデータも多いのですね。

直野氏:我々は第三者ならではのピュアな目線で判断するようにしています。我々自身が各業界・業態におけるドメイン知識を備えたメンバーを揃えています。しかし我々が居るべきポジションとしては皆様と同じ目線ではなく第三者として見たときに、この工程は必要なのかどうかなどといったところは、忌憚ないところを定性的にもデータで得られた定量的にも申し上げるようにしています。場合によっては現場の方と意見の相違が生じる場合もあるのですが、我々としては譲れない部分でもあります。なぜかというとよくお客様からおっしゃっていただけるのは「これまで社員で議論してきたやり方をなぞってしまうと、それでは変わらない。なぜなら通ってきた道だからでエクサ社には業務の詳細に立ち入らず違った目線で意見して頂きたい」という点だからです。

お客さまの中には、既に自分達でソリューションを出されている場合もあるのですが、そうなると課題を洗い出す前にほぼ、答えありきの状態になってしまいます。そこはある程度、我々に任せていただければ、ピュアな目線でかつデータ起点で、AI使ってきちんと答えを導き出すということをやっています。

ただし、データ自体の質と量は重要です。AIに与える指示に関して、こういうふうに学習してほしいよということを、きちんと人が定義した上でデータを集めていく必要があります。

AIの活用でDX推進を成功に導く② へつづく

記事のライター

石野祥太郎

石野 祥太郎   建設DXジャーナル初代編集長/古野電気株式会社

無線の技術者として新技術や製品開発に従事、建設DXの社内プロジェクトを推進

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