電波は通信や放送だけでなくGPSや気象レーダー、電子レンジなど、あらゆる用途に使われています。近年、建設現場内で大容量の通信が求められており、特に広帯域データ伝送に優れているWi-Fiの普及が進んでいます。一方で、電波の利用にはルールが定められており、正しく理解して使う必要があります。今回は、建設現場でWi-Fiを使う上で注意しておきたいポイントを解説します。
Wi-Fiの代表的な利用用途はWebカメラです。導入することで、現場の状況を事務所や本社側でも確認でき、業務の効率化が図れるメリットがあります。これは遠隔臨場と言われており、業務効率化の手段として導入が進んでいます。
Webカメラは、決められた場所に固定して設置をする据え置き型、移動中でも使える持ち運び型の2種類があります。据え置き型カメラはLANケーブルを用いた有線接続が多く、この場合PoE給電(Power over Ethernet)によりカメラ用の電源を準備できない地下などの環境でも構築できるメリットがあります。そのため定点で常時監視する用途への利用に適しています。
一方、持ち運び型カメラは無線接続とする必要があります。アクセスポイントで構築したWi-Fiエリア内であれば、自在に移動しながら接続することが可能です。こちらは現場内でのリモートパトロールなどの用途にも有効です。
他にもスマートフォンやタブレットのアプリを使った通話やチャット、Web会議、施工管理ツールの活用も業務効率化に有効な方法として広く使われています。効率化だけでなく安全性の向上も重要な課題です。現場内外でのコミュニケーションが円滑に行えることで、火災や地震といった有事の対応を迅速に行うことができます。このように、業務がオンライン化することでの働き方改革は進んでおり、建設現場の魅力向上にも繋がっています。
一方で、電波を使う上で電波法を遵守することは当然です。Wi-Fiの周波数帯には屋外での利用が認められていないものがあります。表に示すように5.3 GHz帯は屋外での使用が不可で、5.2 GHz帯は登録局申請をすることや、気象レーダーに影響を与えない区域での利用制限などの条件が課せられています。これは、他の用途で使われている無線機との干渉を避ける必要があるためです。
また、上空での利用は5 GHz帯では認められていません。ここで上空とは、ドローンなど宙に浮遊したものにアクセスポイントを設置する場合を指します。高いビルの屋上にアクセスポイントを設置し、上空に向けて電波を放射させても地上の扱いとなります。
また屋内とは、四方に壁があり、しっかりと電波を遮蔽される建屋内であると定義されています。電波が外に漏れないように遮蔽されていることが重要で、開放部があり、そこから電波が漏れてしまう環境は屋外となります。これは電波の有効利用の観点から決められたもので、屋外で使われる気象レーダーなどとの干渉を抑えるため、周波数帯の利用範囲が決められています。なお、気象レーダーの信号を検知した場合、周波数帯をレーダーと干渉しないものに動的に切り替える仕組みをDFS(Dynamic Frequency Selection)と言います。5.6 GHz帯はDFSに対応していますので、屋外での利用が広く認められています。
建設中のビルには壁がありませんし、トンネルにも大きな開口部があります。そのためほぼすべての現場は建築・土木問わず屋外と定義されます。建設現場では屋外用の周波数帯を正しく使い、電波法を遵守する必要があります。
建設現場で5.3 GHz帯を使うなどの電波法違反があった場合、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金刑」が課されるほか、波法に違反した企業に対しては、勧告や公表などの措置が講じられることもあります。
また正しい使い方以前に、技適マークが付いたアクセスポイントを使うことが大前提です。技適マークは電波法で定められた技術基準をクリアした無線機であることを示すもので、マークが無い無線機を日本国内で使うことはできません。例えば、通信距離が10 kmというような海外製の長距離無線機には注意が必要です。生産国では適合品であっても、国内の基準では無線出力が違法になっている製品は使用できません。
電波は限られた資源であり、利用できる周波数は有限です。知らない間に他人の通信を妨害したりすることが無いよう、ご注意ください。
無線の技術者として新技術や製品開発に従事、建設DXの社内プロジェクトを推進
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