「知らない」では済まされない!法改正で高まる荷主の行政処分リスクを測る、3つのポイント


2026年07月22日

「安心していたら、突然運送会社から取引解消を申し出られる──そんなことにならないよう、荷主は気を引き締めたほうが良さそうです」、これは、前回お届けした記事「物流関連法改正が生じさせた、荷主と運送会社の間に広がる意識のギャップを考える」の最後を締める一文です。

この記事では、物流効率化法・貨物自動車運送事業法・取適法(旧・下請法)などが大きく改正されたことを機に、荷主と運送会社の関係性が変化し、意識の差が生じ始めていることを指摘しました。
記事では主に運送会社における意識の変化を論じたのですが、意識を変えつつあるのは荷主も同じです。

今回は、荷主に起きつつある意識の変化を3つのポイントから考えましょう。

荷主に生じている「3つの意識の変化」

変化その1:トラックの確保が難し過ぎる

最近、「トラックが見つからない」という嘆きの声を、以前にも増して耳にする機会が増えています。

ある荷主は、「チャーター便がホントに見つからなくなりましたよ」と嘆いています。ようやく見つけても、「輸送は来週以降ですね」と即対応してくれないことも多く、困っているそうです。

長年路線便を利用してきた別の荷主は、「輸送リードタイムが長くなった」と言います。
これまで翌日・翌々日には貨物を届けてくれていた路線便各社も、方面によっては3〜4日(あるいはそれ以上)のリードタイムを確保しないと運べないと言われることが増えてきたからです。
この担当者は、「『しょうがないよな』と渋々承知し、貨物を預けたら、今度は『その方面の貨物が多く残貨しました。お届けはさらに1日延びます』と言われ、呆れましたよ」と言っていました。

運送会社にとって、荷主はお客さまです。
しかし運送会社のトラック輸送リソース不足が原因で、荷主側が運送会社の顔色をうかがわざるを得ないシーンが増えてきているのです。

変化その2:デジタル化に伴走してくれる運送会社が尊い

運送依頼のやり取りをシステム化した荷主のエピソードです。
この荷主では、輸送依頼とその応答、案件情報の提供、運行依頼書の発行と受諾といった一連のやり取りをシステム化しました。

とはいえ、それまで電話とFAXでやり取りをしていた協力運送会社に対し、システム導入を強制するのは問題があると考えました。
そこで、導入するかどうかは各運送会社の判断に任せたのです。

数ヶ月が経過した頃、システム導入をしなかった運送会社からクレームが上がり始めました。これらの運送会社に対する輸送依頼が、目に見えて減っていたからです。

「言うことを聞かない運送会社は差別するのか!?」──運送会社のクレームに、荷主側は困惑しました。
というのも、差別する意識は本当になかったからです。

この原因は「便利すぎたから」と言うべきでしょうか。
システムがあまりにも便利だったため、事務員らがシステムを導入した運送会社を優先して輸送の打診をするようになっていたのです。

この件は難しいです。
事務負担が重たい電話とFAXによる輸送打診を嫌がる事務員たちの心情もわかりますから。

システム非導入組の運送会社に愛想を尽かされるのは困るものの、一方で「文句を言うくらいだったら、システム導入してくれればいいのに」と、この荷主の窓口担当者は、ため息とともに本音を語ってくれました。

変化その3:荷主がペナルティを受けるリスク

2026年4月、経団連(日本経済団体連合会)は、「『特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法』改正案等に対する意見」を発表しました。

端的に言えば「物流事業者有利に傾きすぎており、もう少し荷主に対して公平性を保てるように配慮してほしい」という要望が含まれた意見書です。

たとえば「運送以外の役務等の提供の要請」については、運送会社側に過失がある場合には、荷主にペナルティが課されないように明記してほしいと要望しています。
本意見書では、着荷主の店舗担当者が運送会社に(たとえば)棚入れを要求し、これを発荷主に確認することなく運送会社が受諾した場合、発荷主に非がないと説明しています。
ただし着荷主の中には「正式な交渉ルートを経由することなく、店舗担当者レベルの要望を容易く受け入れる運送会社(ドライバー)が悪い」と考えるケースもあります。

このあたりは「私がどう考えるか?」ではなく、「ガイドラインではどう示されているか?」を正確に把握しておく必要があります。

2026年1月、下請法に代わる中小受託取引適正化法(取適法)が施行されました。
この意見書は、取適法に代表される公正取引委員会の一連の方針変更に対し、荷主側(広く言えば産業界全体)のリスクヘッジを図ったものです。

この姿勢は、すべての荷主が見習うべきものです。

大切なのは、取適法に限らず、物流関連法令が荷主に要求する取り組みを把握し、現時点での自社業務に当てはめたうえでのリスク分析を行うこと。

「えっ!そんな法令知らなかったよ!」と行政処分を受けて嘆いても、後の祭りですから。

荷主における意識変化のポイント

ただし上記3つの意識変化は、すべての荷主において一様に発生しているわけではありません。

1の変化は、今や社会問題化したドライバー不足が引き起こした意識の変化なので、比較的多くの荷主が感じていることでしょう。

しかし、2の変化は、自社の物流業務を効率化させようという改善意欲(改善行動)が生み出した意識の変化です。
つまり改善行動を起こしていない荷主には発生しません。

3の変化は、物流効率化法、貨物自動車運送事業法、取適法といった物流関連の法令をつぶさに把握・分析しないと発生しない意識の変化です。

つまり物流改善に対する意欲や、物流変革に対する感度の違いが、意識変化の違いを生み出していることになります。

法令を把握していないリスク

2026年5月28日、帝国データバンクが発表した「改正物流効率化法に関する企業の意識調査(2026年4月)」が話題を集めました。

改正された物流効率化法に対し、7割の企業が「内容を知らない」という衝撃的な調査結果が含まれていたからです。

法令に対する理解不足が生じさせるリスクを、「変化その2」と「その3」に当てはめて考えましょう。

変化その2「デジタル化に伴走してくれる運送会社が尊い」のケース

法令では運送契約の書面交付が義務化されており、取適法では口頭での追加作業依頼を禁止しています。

もし電話とFAXによる一連のやり取りにおいて書面交付を行っていないのであれば、荷主側もペナルティを受けることになります。つまり電話とFAXのようなアナログな業務遂行は、現行法令下ではさらに業務負担を増やすことになります。

そもそも物流効率化法では、荷主、運送会社を問わず、すべての事業者に対し輸送効率の向上と持続可能な物流への取り組みを努力義務として課しています。

現在の状況を考えれば、システム導入を運送会社の自由意志に任せるのではなく、法令の改正内容に基づき法令遵守を進める荷主側の姿勢を説明し、すべての協力会社を対象としてシステム導入を進めるのが、望ましいやり方と考えられます。

変化その3「荷主がペナルティを受けるリスク」のケース

たとえば、棚入れの強要については、事実上これまで摘発されることがありませんでした。

これは下請法では、荷主と運送会社の間における「優越的地位の濫用」の摘発ができず、これが可能な独占禁止法では、認定に手間と時間が掛かりすぎる、という問題があったからです。

しかし取適法では、新たに特定運送委託というルールが設けられ、荷主〜運送会社間の直接取引における「買いたたき」や「無償の荷待ち・荷役の強要」といった不当な行為が、より厳格に摘発・是正できるようになりました。

しかし、たとえば特定運送委託を知らなかったり、そもそも「棚入れは運送サービスの範疇だよね」と未だに間違った認識を持っている人もいます。これは荷主のみならず、運送会社側も同様です。

「1運行2時間以内ルール」は、特に注意が必要です。
この問題については、本コラムで昨年公開した「なぜあなたの『荷待ち時間対策』は進まないのか?バース予約受付システムではなく、『事業所内の滞在時間を正確に把握したい』という事業者が増えつつある理由」で詳しく説明しました。

同記事では、「なぜ、バース“予約”システムだけでは駄目なのか?」と題し、見かけ上、待機時間をゼロにする方法を紹介、しかしこれでは本質的な輸送効率向上にはつながらないことを論じています。

物流効率化法は、「物資の流通の効率化を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与すること」(第一条)を目的に掲げ、荷主や運送会社といった立場の違いに関係なく、すべての事業者に対し輸送効率の向上を図る努力義務を課しています。

法令の全体像を把握しないで、「荷待ち時間を減らす」といった部分だけをピックアップし、理解したつもりになってしまうと、「見かけ上、待機時間をゼロにする」ような選択をしてしまいます。

こういった「木を見て森を見ず」な行動にならないように、法令に対しては十分な把握と理解、そして分析を行うように心がけたいものです。

大変でも把握しなければならないのが法令

この記事は、車両入退管理サービス「FLOWVIS(フロービス)」を提供している古野電気が運営するコラムに掲載しています。

先日、コラムの打ち合わせ中に担当者と雑談をしていたところ、「最近、経営企画のような企業経営に直接関与している部署からお問い合わせを受けることが増えています」とお聞きしました。以前は、物流部からの問い合わせが多かったそうです。

これは「物流改善は部分的な課題ではなく、全社的な経営課題である」と認識する企業が増えている証と考えるべきでしょう。

日本の物流政策は、長らく停滞していました。
この反省から、物流政策を国土交通省だけに任せるのではなく経済産業省と農林水産省が座組に加わり、2023年に物流革新政策がスタートしました。

政府もまた、トラックドライバー不足に起因する物流クライシスを、日本の未来に関わる重要な課題だと認識したのです。

結果、次々と法令が改正・施行されたわけですが…この急激な変化に対応できていない企業が多いのも当然でしょう。

筆者は仕事柄、法令の理解に努めていますが、実際これは大変です。
一連の物流法令関係のソースをNotebookLMにまとめ、分からないことがあると質問を投げかけていますが、先日、この元ソースの総文字数を算出してみたら、なんと12万文字を超えていました。

「12万文字オーバーの法令をつぶさに理解しなさい」というのは、はっきり言って無理ゲーです。

その歪みが「7割の企業が改正物流効率化法の内容を知らない」という調査結果に現れているのでしょう。

ただしこの調査結果に「うちだけじゃないんだ。皆、法令を理解していないんだね」と安心するのはダメです。

「知らない」では許されないのが法律ですから。

繰り返しますが、行政処分を受けてから「知りませんでした」と言っても、誰も同情はしてくれませんし、処分が軽減されることもありません。

あなたの会社における意識の変化は、「意識の変化」1から3のうち、どのレベルでしたか?
「法令さえ知っていれば…」と後悔しないよう、心がけたいものです。

この記事のライター
坂田 良平氏
物流ジャーナリスト

Pavism代表。「主戦場は物流業界。生業はIT御用聞き」をキャッチコピーに、執筆活動や、ITを活用した営業支援などを行っている。ビジネス+IT、Merkmal、LOGISTICS TODAY、東洋経済オンライン、プレジデントオンラインなどのWebメディアや、企業のオウンドメディアなどで執筆活動を行う。TV・ラジオへの出演も行っている。