世界最大の建設展示会「CONEXPO-CON/AGG 2026」現地レポート
~北米建設市場の今と、日本DXの意外な優位性~


2026年07月15日

3年に一度、米国ラスベガスで開かれる「CONEXPO-CON/AGG」。建設・建機業界では世界最大規模を誇るこの展示会に、建設DX Journalの取材班が足を運んだ。250,000㎡を超える会場に約120,000人が集まる熱気の中で見えてきたのは、北米建設市場の「今」と、日本の現場DXが持つ意外な競争優位だった。

屋外展示の様子 (© CONEXPO-CON/AGG)

ラスベガスに集結した無数の重機

コンベンションセンター正面を抜けると、重機の列が果てなく続いていた。ブルドーザー、油圧ショベル、アスファルト敷設機…。北米建設市場を支える鉄の巨人たちが、照明を浴びて鈍く光っている。

屋内展示の様子(© CONEXPO-CON/AGG)

日本で開催される展示会CSPI-EXPO(幕張メッセ)と比べると、来場者数は約5倍、会場面積は約8倍。数字で知ってはいたが、実際に歩くと桁違いのスケールに圧倒される。北米に限らず、世界中のメーカーが一堂に会し、業界の今を競い合う場が、3年に一度ここに出現する。
主催はAssociation of Equipment Manufacturers(AEM)。今回のキーノートでは、AEMのBrian Buehler氏をはじめ、ネバダ州交通局、産業局、インフラ政策コンサルのNubo Consulting担当者が登壇した。共通して語られたのは、インフラ投資の持続可能性だ。「資金の見通しを立て、許認可を簡素化し、地域連携を強化しなければ、せっかくの投資も現場に届かない」。熟練労働者不足が深刻化する中、建設コストの上昇と工期遅延が現実の脅威として語られていた。また、データセンター建設ラッシュによる電力・水・輸送インフラへの新たな負荷についても議論が及んだ。「機材を供給するだけでなく、施工効率化や人材不足補完の技術が不可欠」というメッセージは、現場DXへの期待そのものだった。

キーノートの様子

DX化は「現場ではなく機械」から進んでいる

会場を一巡して感じたのは、北米のDX化は機械側から進んでいるという点だ。コマツはインテリジェントマシンコントロールを搭載したブルドーザー・ショベルを展示し、設計データに基づく自動・半自動制御を訴求。
GRAVIS ROBOTICSは既存の油圧ショベルに後付けで自律化機能を追加するソリューションを展示し、本展示会のNEXT LEVEL AWARDを受賞した。LiDARセンサーとタブレット型の操作インターフェースを組み合わせ、掘削・溝掘りといった反復作業を自律実行できる仕組みは、シンプルな設計ながら実用性の高さが際立っていた。

GRAVIS ROBOTICSのソリューション(油圧シャベルの上面に取付)

BOMAGは会場からサウスカロライナ州の単鋼輪ローラーをインターネット経由で遠隔操作するデモを披露した。前後進・旋回・振動まで操作でき、複数カメラで周辺を確認しながら危険箇所の作業を行う映像は、見学者の足を止め続けた。
一方、現場で使うICTデバイスや周辺ソリューションは、日本と比べて完成度・使い勝手ともに一歩引いた印象だ。少なくとも会場で見た範囲では、日本の方が実運用を意識した完成度は高いように映った。

BOMAGのデモンストレーション

埋設管マッピングから安全カメラまで、注目技術を一挙紹介

GSSIの地中レーダー(GPR)は、GNSSと組み合わせた埋設管マッピングで存在感を示していた。地表から電波を送信し、地中の埋設物・地層境界の反射信号を解析して位置と深さを推定するシステムで、測位情報と組み合わせると埋設物の位置を地図上にリアルタイムで記録できる。北米でもファイバー・水道・ガスの敷設更新が進む中、「埋設物の位置が分からない」という課題は共通しており、担当者は「ここ数年でニーズが急増している」と語っていた。

GSSIの地中レーダー

現場の安全管理では、HOOKCAMやSENTRACAMが目を引いた。HOOKCAMはクレーンのフック・ブーム先端に後付けできる無線カメラで、吊荷や周辺の死角を映像でリアルタイム確認できる。SENTRACAMは現場全体を対象にした遠隔監視サービスで、不審者侵入時に音声警告と通報を行う。いずれも現場課題に着目した分かりやすい提案だった。一方で、日本で見られるような運用面まで含めた作り込みとは、アプローチの違いも感じられた。

「圏外」という日本の強みが、北米で生きる

今回の取材で最も印象に残ったのは、北米市場の通信前提だ。展示されていたサービスの大半は、スターリンクや携帯電話回線など屋外の広域回線を前提としていた。タブレットや市販のスマートフォンで通話・施工管理アプリをそのまま使える現場向けWi-Fiは、ほとんど確認できなかった。日本では、こうした環境への対応が現場DXの実用化を左右する課題として認識されており、多くの取り組みが積み上げられてきた。国内で培ったノウハウは、北米市場においても差別化の核になり得る。世界の舞台で問われる日本の現場DXの実力を、試す時が近づいているのかもしれない。

会場外周の大型機展示(© CONEXPO-CON/AGG)

編集後記

現地ではつい、建築現場に足が向いた。2027年開業予定の巨大なギター型ホテル「ハードロック ホテル&カジノ・ラスベガス」だ。高さは約213メートル。
タクシーに乗り込み、「この辺で一番大きなビル現場を見たい」と運転手にお願いして連れてきてもらった。どこに来ても、結局見ているのは観光名所ではなく現場。どうやらこの職業病は、国境を越えるらしい。

建設中のハードロック ホテル

この記事のライター
石野 祥太郎
建設DXジャーナル初代編集長/古野電気株式会社

無線の技術者として新技術や製品開発に従事、建設DXの社内プロジェクトを推進

建設DXに関するご相談・お問い合わせ