
型式
CSH-10
神奈川県三浦半島の先端に位置する三崎は、古くからマグロの水揚げで知られる歴史ある漁港です。
その三崎港において、2025年に11年ぶりとなる新造船として進水し、大きな注目を集めたのが第五君栄丸です。
船長の宮川樹様は、マグロ漁の本場・大間で腕を磨き、現在は神奈川県内でもトップクラスの水揚げ実績を誇る若手実力派の漁師です。
第五君栄丸は16トンのマグロ延縄船であり、効率的な操業と高い成果を追求する宮川船長のこだわりが随所に反映された一隻となっています。
船名「第五君栄丸」
操舵室内部
以前は全周型スキャニングソナーCSH-8L、その前にはサーチライトソナーCH-500を使用されていました。
全周型スキャニングソナーへ切り替えた際には、その探索効率の高さと情報量の多さに大きな手応えを感じられたといいます。
その経験から、新造船にはさらに映像品質の高いスキャニングソナーを導入したいと考えられていました。
また、効率的な漁獲には、魚群の状況だけでなく、海況など多様な情報を的確に把握することが不可欠です。こうした考えのもと、限られた船内スペースを最大限に活用し、従来以上に多くの機器を導入。各種センサーを含めたネットワークシステムを構築し、必要なデータを確実に取得できる配置とすることが求められました。
全周型スキャニングソナー「型式:CSH-10」は、自船周囲全方向に向けて同時に超音波を発射して水面下の状況を瞬時に捉え、魚群や海底、投下した綱など、海中の様々な状況把握を容易にします。周波数は81.5~85.5 kHzの範囲で選択が可能となっており、干渉を防ぎながらも、瀬付き・底付き魚群を判別できる探知性能を備えています。またシャープなビーム幅は表層魚群の探知に有効です。
スキャニングソナーとしてはコンパクトな設計で、中・小型船にも搭載することが可能です。
広帯域ダイナミックレンジによる新しい信号処理(EAV設定)により、微弱なエコーから強いエコーまでを、階調豊かな映像で表示できるデジタルレーダーです。50 kWの高出力で遠距離探知に優れた威力を発揮します。
最新画像処理技術「TimeZeroテクノロジー」を駆使するとともに、全国詳細等深線入りのチャートを標準内蔵し、詳細な海底地形表示により魚群の集まるポイントの選定や、投網の際に注意すべき地形などを視覚的に把握できるなど、操業に役立つ機能が充実しています。
マグロ漁では、水温の変化や潮目、潮流といった海況がとても重要な指標になります。
第五君栄丸では、そうした情報に加えて、他船の動きや気象情報も含め、プロッタ上で一元的に確認できるようにしています。これらを組み合わせて見ることで、魚が集まっていそうな場所を推測し、いち早く良い漁場を見つけることができています。
プロッタ画面(GD-700)
プロッタ画面に水温や潮流情報などを重畳表示(GD-700)
漁場へ向かう途中で重要になるのが、レーダーを使い、鳥山を発見することです。ナブラを狙う鳥をいち早く見つけることで、有望なポイントを絞り込みます。今回導入したFAR-2258は、遠くの鳥でもはっきりと映るので非常に役立っています。状況によっては潮目が見えることもあり、他船の動きも含めて、最も良さそうな漁場を判断しています。
(右:FAR-2258、左:FAR-1426)
12NMレンジにて遠方の鳥を捉えた映像(FAR-2258)
そしてポイントに近づくと、ソナーを使って魚群の状況を詳しく確認します。導入したCSH-10は、以前使用していたCSH-8Lと比べて映りが大きく向上しており、マグロやカツオを単体で捉えられるほどの性能に驚きました。魚の数や動き、潮の流れを見ながら追跡し、最適な位置を見極めています。
ソナーで捉えたマグロ(CSH-10)
ソナー映像に潮流情報を重畳(CSH-10)
今回の船で特にこだわったのは、こうした情報を船内のどこにいても確認できるようにすることです。操舵室だけでなく、船首や2階ブリッジにもモニターとコントローラーを設置し、ソナーやレーダーを操作できるようにしています。表示する映像はマトリックススイッチャーで切り替えられるため、その時の漁の状況に応じて最適な情報を表示できます。
例えば、カツオを狙う際には、船首のモニターで集魚中はソナーを使って活性度合いなどを確認しています。そして釣り上げ中は魚探に切り替えてタナを確認します。
一方でマグロを探すときは、2階ブリッジでレーダー、ソナー、プロッタを同時に表示しています。このように、漁のタイミングごとに適切な場所で必要な情報を確認できることが、効率化と成果につながっていると感じています。
また、このスイッチャーを含めた機器の艤装については、鈴木電気商会様にご尽力いただき、理想通りの構成を実現することができました。
マトリックススイッチャー
2階ブリッジのモニター
船首側のモニター
船尾にもモニターを設置し、従業員が状況を確認できる
進水後はフルノの技術スタッフにも乗船していただき、実際の映像を見ながら各機器の設定を細かく調整しました。その設定はテンプレートとして保存しているため、魚種や海況に応じてすぐに切り替えて使うことができます。フルノの製品は多機能ですが、適切に使えば大きな力を発揮すると思います。
私は独立してまだ7年ですが、ここまで漁獲を上げられているのは、こうした機器とフルノの皆さんのサポートがあってこそです。これからも、自分の漁法に合った機能をしっかり使いながら、経験とデータを組み合わせて漁を進化させていきたいと思っています。
本案件は、単なる機器導入ではなく、「漁の判断力を最大化する統合システム」の構築でした。
造船計画の初期段階から、船主様の構想は非常に具体的で、多岐にわたるものでした。限られた船内空間の中で、機器の性能・配置・操作性をすべて高いレベルで成立させる必要があり、検討を進めるたびに新たな課題が見えてくる。非常に難易度の高いプロジェクトでした。
しかし、船主様は以前から航海機器を高いレベルで使いこなし、実績も十分に積み重ねてこられた方です。その構想は確かな経験に裏打ちされたものであり、すべてのご要望に応えることが私たちの使命だと考えました。営業・技術・開発が連携しながら課題を一つひとつ整理し、最適な構成を追求していった結果、現在のシステムを実現することができました。
また、導入して終わりではなく、実際の操業で成果につながることが重要だと考えています。進水後は操業にも同行し、現場で映像を確認しながら各機器の設定を調整。船主様の操業スタイルに合わせて、より直感的で使いやすい状態へと仕上げていきました。
今回の取り組みを通じて改めて感じたのは、「機器は使いこなされてこそ価値を発揮する」ということです。その価値を最大限に引き出すところまで伴走することが、私たちの役割だと考えています。今後も現場に寄り添いながら、成果につながる提案を続けてまいります。
海面付近に集まった小魚を狙って海鳥が群がっている状態。好漁場を見つける手掛かりとなる。
魚群が小魚を追い込み、水面をざわつかせている状態。
魚がいる水深層。
異なる潮流や水温の海水が接する境界線。
船舶の位置や進路などを相互に送受信するシステム。
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