
型式
FSV-85/85L MARK-2
和歌山県白浜町は、関西を代表するリゾート地として知られる一方、古くから漁業が盛んな地域でもあります。一本釣り漁をはじめとした伝統的な漁法が今も受け継がれており、豊かな漁場に恵まれた「漁師町」としての一面を持っています。
海佑丸の北野船長は、この白浜の海で長年操業を続けてきたベテラン漁師です。伝統の一本釣り漁に加え、地元で「ケンケン漁」と呼ばれる引き縄釣りにも精通しています。一本ずつ丁寧に釣り上げることで魚体へのダメージを抑え、高品質なカツオ・マグロを水揚げしています。
船名「海佑丸」
10トンの一本釣り漁船。小型船ながら最新の漁労機器を多数搭載し、高度な操業を実現しているのが特徴です。
機器の視認性や操作性を重視し、モニターはあえて埋め込み式とせず、設置の自由度を確保。操業スタイルに合わせた柔軟なレイアウトにより、船上のどの位置からでも重要な情報を迅速に把握できる環境を整えています。
操舵室内部
海佑丸では以前から当社製品をご使用いただいており、その機能性や品質について高い評価と信頼をお寄せいただいていました。一方で、当時の機器では魚の位置や動きの把握において、経験や勘に頼る場面も少なくなく、「まだ見逃している魚があるのではないか」という課題を感じておられました。
そこで新たに船を建造するにあたり、こうした見逃しを減らし、より精度の高い判断で効率的に漁獲を行うことを目的に、最新の漁労機器の導入を決断されました。
全周型スキャニングソナー「型式:FSV-85 MARK-2」は、自船周囲の全方向に超音波を送信し、水中の状況をリアルタイムで把握できる高性能ソナーです。魚群や海底地形、投入した漁具の位置などを広範囲にわたり視覚的に捉えることができ、効率的な探索を実現します。
本機は、設定の異なる水平探知画面を同時に2つ表示できる水平2画面併記機能を搭載。異なるレンジやティルトを組み合わせることで、広域探索と詳細観測を同時に行うことが可能で、2台のソナーを運用するのと同等の効果を発揮します。
また、高度な映像処理技術により、分割表示およびフル画面表示の切り替えにも対応。それぞれの探知画面を独立して確認できるため、状況に応じた迅速な判断をサポートします。
マルチビームソナー「型式:WMB-6340」は、最大探知距離1,000m(真下方向のみ)を実現した深場対応の高性能ソナーです。複数方向に同時に超音波を送受信することで、広範囲の水中情報を効率的に取得することができます。
最大5ビームの表示に対応しており、魚群の分布や立体形状、さらには自船との位置関係を直感的に把握することが可能です。これにより、より精度の高い状況判断をサポートします。また、取得した深度データをもとに三次元の海底地形を表示する機能も搭載しており、海底構造の把握やポイント選定にも有効です。
海鳥レーダーFAR-2268DSはハイゲインアンテナSN30DFの接続により、遠距離探知性能が当社従来比10%向上しました。船舶以外の小さな物標も検知しますので効率操業に寄与します。
白浜の沖合に設置されたブイの周辺は多くの小魚が集まり、それを狙ってカツオやマグロなどの回遊魚が居着くため、非常に重要な漁場となっています。一見ポイントがすぐに分かるように思われるかもしれませんが、効率よく漁獲するには魚の動きや位置、潮流などの海の状況を正確に把握することが必要で、そのためには漁労機器の活用が欠かせません。
以前はセクターソナーを使用していましたが、マグロやカツオのような動きの速い魚は、ソナーが一周する間に移動してしまい、捉えきれないこともありました。全周型スキャニングソナーに切り替えてからは、そうした見逃しは大幅に減りました。さらに今回の機種では、同時に2つの角度で探索することができます。片方は角度を浅めに、もう片方は深めに設定しており、今まで以上に海中から情報を得られるようになりました。
さらに、ポイントに近づいたときに、今まで以上に魚群の形状や魚の動きなどを細かく把握することができます。
また白浜沖は海が荒れることも多く、そうした状況でも魚を正確に捉え続けられるかが重要です。最新の機器は感度が高く、船の動揺も補正されるため、狙った魚を外しにくくなり、結果として操業の安定性と効率が大きく向上しました。
ソナー映像を2つモニターに分割し、より見やすく表示(FSV-85 MARK-2)
潮流データの活用も非常に重要です。ソナー画面に潮の流れを重ねて表示できるため、魚の動きと潮の関係を見ながら、船をどのように寄せるかを判断できます。カツオやマグロは活性があるときは表層に集まってきますから、その表層の潮の流れを見ることで、どのように船を動かせば魚に近づいていけるかを判断しています。
またこの辺りは結構霧が出ることも多いです。そんな時に沖に出ると陸地が見えなくなりますから、ブイ周辺の潮がどの方向に流れているかなどを把握するのにも潮流計は不可欠ですね。
ソナー映像に潮流情報を重畳(FSV-85 MARK-2、CI-88)
あと、気に入っているのはマルチビームソナーです。やはり真下だけでなく、3方向見えるのが良いですね。従来の魚群探知機では真下の情報しか分かりませんでしたが、今は魚が船の左右どちらにいるかまで把握できるため、船を魚の真上に正確に乗せることができるようになりました。
船を正しく動かせているかの答え合わせがすぐに出来るので、自分の経験・感覚と合わせることで、漁場の状況に合わせた最適な漁をすることができていると感じています。
右がマルチビームソナーの映像。右側に大きな反応があることが分かる(WMB-6340)
こうした機器の情報は、ブリッジだけでなく船の船首側や後方にもモニターを設置して確認できるようにしています。またスイッチャーにより、狙う魚種や漁法で映す映像を切り替えています。そのように全体的に船の装備をカスタマイズできるところが、船を新造する場合の良いところですね。搭載する機器に応じた最適な装備や船体形状の調整をすることができました。
船首に設置したモニター類
実際の操業の様子。
例えば、ソナーなどの大型機器は一度付けてしまうと交換も大変で、たとえグレードアップしたいと思っても、サイズ的に船に合わず、物理的に無理なこともあります。
そのため、船を作るタイミングで最新かつ最高の機種を提案してもらい、搭載することとしました。もちろんコストはかかりますが、それらの機器を搭載することにより、今まで見逃していた魚を見つけることができるなら、長い目で見たらメリットの方が大きいと思います。今ではどの機器も、操業には欠かせない存在になっています。
遠方の海鳥や浮標などの微小なターゲットも捉える海鳥レーダー(FAR-2268DS)
機関室の制御部まで整然と装備されている
もちろん、今後さらにこういうことができるようになれば良いなという期待もあるので、フルノが新しい機器を作るのを心待ちにしていますし、必要であればなんでも聞いて欲しいと思いますね。
本案件は、船主様の「最高の船を造る」という強い思いを形にするために、当社だけでなく、代理店様、造船所様が一体となって取り組んだプロジェクトでした。
船主様は長年にわたり航海・漁撈機器を使いこなし、豊富な経験を積み重ねてこられた方であり、新造船に対する構想も非常に具体的なものでした。
計画段階から船主様の想いを丁寧に伺いながら、造船所様や代理店様とも綿密な協議を重ね、限られたスペースを有効活用すべく、最適なレイアウトやシステム構成を検討しました。
その結果、当営業所管轄の10t漁船としては初となるFSV-85 MARK-2およびWMB-6340の導入を実現するとともに、
サテライトコンパスの二重化やマトリックススイッチャーの採用など、操業時の信頼性と利便性を高める提案についても採用いただくことができました。
私たちは、機器は導入して終わりではなく、実際の操業でその性能を十分に発揮してこそ価値があると考えています。
そのため、竣工後も営業・技術スタッフが連携し、実際の操業に乗船し各種機器の設定調整を実施しました。
現場での使用状況を確認し、船主様の操業スタイルや判断方法に合わせて細かなチューニングを重ねることで、より使いやすく、より成果につながる理想のシステムを構築することができました。
船主様にとって、新造船の建造は大きな決断です。
その思いに応える理想の船づくりには機器の知識だけでなく、現場を深く理解し、船主様の想いに寄り添う姿勢が不可欠であるということを本プロジェクトを通して改めて実感しました。
これからも知識と経験を積み重ねながら、単なる機器メーカーではなく、船主様にとって信頼できるパートナーとして、操業成果の向上につながる提案とサポートを続けてまいります。
高速で走る漁船の後方から、擬似餌(ルアー)を流してカツオを釣る伝統漁法
45度程度の広いビームを自船周囲360度で回転させ、全方位を探索するソナー
複数のビームを扇型に広げ、海中を探知するソナー。リアルタイムな魚群の方位、深度、動き、そして海底状況を一度に把握できる。
魚がどれだけ積極的にエサを追っているか、つまり捕食行動の強さを表す
船舶の位置や進路などを相互に送受信するシステム
新規商談、故障・修理、仕様詳細について