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ITS業界記事 5G実用化に向けたサービスが続々登場

 2020年代前半の実用化に向けたデファクトスタンダード争い

第五世代の通信方式5Gの実用化に向けた動きが加速している。
携帯電話の普及に伴い、1990年代からこれまで通信技術は飛躍的な進化を続けてきた。
その基礎を作ったのは、北欧スウェーデンのエリクソンなどの通信関連事業社だ。筆者は2017年にストックホルムのエリクソン本社、またスウェーデン政府が進める先進科学技術の研究所で通信技術の変遷について取材した。

その際に訪れたある施設で、スウェーデン政府が進めるITS(高度交通システム)政策の幹部が「あなたがいま立っているこの場所で70年代に1Gの技術開発が行われていた」と説明した。むろん、当時は1Gという言葉はなく、90年代から2000年代に3Gの研究開発と普及が始まってから、70年代まで遡って1Gという呼び方が定着した。
そしていま、時代は5Gへと移行しようしている。1G発祥の地、スウェーデンはもとより、ここ数年で一気に世界市場における携帯電話事業が拡大した中国を含めて、5G技術の事実上の標準化であるデファクトスタンダード争いが激しくなっている状況だ。

 日本国内での5Gサービス

こうした中、日本においてはNTTドコモなど大手通信事業者が5Gに関する実証試験を行っている。本連載でも同社の技術研究所がある神奈川県の横須賀リサーチパーク(YRP)で開催されたITSと5Gを連携させた技術説明会の模様を紹介した。
その他にも日本各地で5G関連の実証試験が行われているが、その多くは単なる研究開発ではなく、2020年代前半の実用化を目指したサービスを想定している。
2019年5月後半、東京都内で開催された5Gに関する技術展示会を取材し、事業者各社の関係者からサービスの説明を受けた。
その中から興味深い案件をいくつかご紹介する。

沖電気工業 フライングビュー

機器を移動、または固定した状態で”自由視点”で映像をモニタリングするシステム。ここでいう”自由視点”とは、複数のカメラで撮影した実際を映像から、そのカメラから見たアングルではなく、外からカメラ側を見たような仮想現実を映像化するものだ。
簡単に言えば、ドローンで撮影したような映像になる。
技術的には、大容量の高画質動画を、米ザイリンクのProgrammable SoC (システム・オン・チップ)を実装し、リアルタイムで俯瞰する映像を合成している。しかも、低電力を実現している。
具体的な事例として、富士スピードウエイで大型ミニバンを時速160kmで走行させた実験に成功。通信についてはNTTドコモと連携した。
また、静岡県沼津市の内浦湾で小型船舶に搭載したカメラでの実証試験を行った。こうした実験で明らかになったように、これまでは複数のカメラ映像を切り替えて周囲の監視を行ってきた状況から、見たい方向から周囲の状況を把握することができるようになる。これも、送信容量が多く、また通信における遅延が少ない5Gによって可能となる技術だ。

日産自動車 I2V (インヴィジブル・トゥ・ヴィジブル)

車載の通信技術では、V2Xという表現が一般的だが、こちらはI2V。メタバースと称される仮想世界を通じて、遠隔地にいるような状況を作り出すという考え方だ。
同様の技術は、ボッシュやコンチネンタルなど海外の自動車部品大手でも、VR機器を装着して、走行中のクルマの後席に乗車している情景を感じるなどの実験を行っている。
一方、日産のI2Vの特徴は、自らの姿を3D化したアバターとして、車内に乗車するというもの。複数のアバターが乗車することも可能で、お互いの姿を見たり、また車内の様子を俯瞰したりすることもできる。
また、アバターは人間を模すだけではなく、様々なキャラクターなどに変更することも可能だ。日本は、アニメーションなどクリエイティブなビジネスで他国とは一線を画する。I2Vは将来的に、マネタイズが可能な事業として量産化される可能性があると思う。

KDDI 建設機械の遠隔操作

大林組の安威川ダム検閲現場(大阪府茨木市)で行った建設機械の遠隔操作。土砂災害からの復旧工事を想定した。
使用したのは2台の建設機械で、合計で8つの車載カメラと、作業場周辺に4台の固定カメラを設置。それらの画像を5Gで遠隔操作システムに送信した。
遠隔操作システム側には複数のモニターがあり、作業者は建設機械と同様のレバーなどを操作しながら作業を行った。ショベルカーでは、土砂すくい、ダンプカーからの土砂おろし。また、ダンプカーでは土砂の移動と土砂おろしを実施した。

KDDI関係者によると、操作を行った作業員は、建設機械のベテランドライバーたち。実験の初期は、画像を通した作業に違和感を持ったが、徐々に慣れてきて、現場での作業に比べて振動や外気の影響を受けないことを考慮すると「遠隔操作のほうが疲れない」と感想を述べたという。

この他、NTTドコモが遠隔医療による外科手術を想定した展示や、2020年の東京パラリンピックをイメージした競技用車いすによるバーチャルレースの機材を出展した。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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