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ITS業界記事 2020年の日本自動車産業 ~3つのターニングポイント~

 2020年、日本の自動車産業にどのような変化があるのか?

過去を振り返ってみると、2010年代はCASE(コネクティビティ、自動運転、シェアリング、電動化)やMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)という新しい技術やサービスと、自動車産業との関係が強まった。

2020年1月、東京で開催された自動車工業会・自動車部品工業会などの年始会合では、「2020年代はCASEやMaaSを社会実装する時代に突入する」という意見が主流だった。
では、2020年代の入り口となる2020年、日本の自動車産業界にとって新たなる時代へのターニングポイントは何になるのだろうか?
筆者の私見では、次の3つを挙げたい。順に詳しく説明する。

 2020年7月、東京オリンピック

東京で56年ぶりに開催される、東京オリンピック。
これにあわせて、東京都内や東京周辺の高速道路では次世代自動車に関する様々な実証試験が行われる。なかでも注目されるのは、自動車メーカー各社による自動運転の実証試験だ。

日本政府が2015年から立ち上げたSIP (戦略的イノベーション創造プログラム)、その第一期の総仕上げとしての意味合いが強い。位置情報としては、オールジャパンで取り組んできた高精度三次元地図のダイナミックマップや、準天頂衛星みちびきを活用。自動車メーカーとして、ビジネスの枠を超えた協調領域という概念のもと、日本での自動運転の実用化を目指してきた。乗用車、商用車、大型トラック、バス、小型モビリティなど、自動運転を活用した様々なハードウエアの開発が進んだ。

その上で課題となっているのが、SIP第二期としての自動運転プロジェクトのあり方だ。ポストSIPとも呼ばれ、事実上、2020年東京オリンピック後の対応策を指す。
SIP第二期は、第五世代通信の5Gを活用したビッグデータを活用する社会の中で、自動運転の社会実装を目指すとしている。そのためには当然、インフラとして5G関連のハードウエアを設置する必要がある。国は、2024年までに全国21万基ある信号機に5Gを使ったデータの送受信機を設置するとの概案を提示している。だが、設置費用について、公的資金と民間資金を融合するPPP (パブリック・プライベート・パートナーシップ)を想定しているが、具体的な実施案が定まっていない状況だ。

自動車メーカー各社としては、インフラへの投資は公的資金、または高速道路関連企業などが負担するべきとの考え方が未だに強い。そのため、SIP第二期ではビッグデータ活用の具体案が描きにくい。
最悪のシナリオとして、東京オリンピックがオールジャパンとして自動運転開発のピークを迎えてしまう、腰折れ状態に陥る可能性もある。

 2020年11月、アメリカ大統領選挙

世界に目を向けると、アメリカ大統領選挙が大きなカギを握る。次期アメリカ大統領が誰になるかで、世界市場におけるCASEやMaaSに大きな影響を及ぼす。
換言すると、現在のトランプ政権と、前政権であるオバマ時代とでは、次世代車関連の政策が大きく転換した。
この方針が継承され、さらなる変化を生むのか?
それとも、民主党政権となり、4年前までの政策に舞い戻るのか?
具体的な事例を挙げると、EV(電気自動車)について、オバマ政権ではグリーンニューディール政策によってEVやリチウムイオン電池の開発で民間企業に対する巨額の公的支援を行った。だが、多くの事案で事業が未継続、事実上の倒産、または中国企業に買収されるなどしたため、公的資金導入における企業への審査の甘さが指摘された。

こうしたオバマ政権での失敗に対して、トランプ政権ではEV普及は当面限定的、という姿勢を貫き、目立ったかたちでの公的資金の導入を行っていない。
自動運転についても状況はEVと似ている。オバマ政権の後期、米運輸省(DOT)は自動運転に関する法整備や、自動運転を活用した新しい街づくりなどを提唱したが、トランプ政権になると一気にトーンダウンしている。
さらには、トランプ政権では燃費規制についてもオバマ政権までの手法を全面的に否定してきた。連邦環境局とカリフォルニア州環境局による、事実上のダブルスタンダードを改め、連邦政府が燃費規制を一元化するとしているが、実施については第二期トランプ政権へと引き延ばす見込みだ。

 2020年5月、トヨタ全店舗全車種併売

もう一度、視点を日本に戻すと、自動車産業界にとって大きなターニングポイントとなるのが、トヨタが2020年5月に実施する、全店舗全車種併売だ。現在、4系統あるトヨタ販売チャンネルの事実上の再編だ。
これとほぼ同時、2020年4月には、トヨタの部品卸販売網であるトヨタ部品共販33社と、アフターマーケット用品販売事業ジェームスを行うトヨタ資本企業のタクティが合併する。

こうした動きは、自動車流通の世界では過去最大の出来事であり、業界関係者の間では大きな波紋が広がっている。
以上、3つのキーポイントについて、詳細に関する継続的な取材を行う予定だ。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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