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ITS業界記事 コネクテッドビジネスや、ホンダが新たに提唱した「eMaaS」の可能性

 コネクテッドビジネスの多様性

ホンダが開催した恒例のメディア向け技術説明会「ホンダミーティング(2019年7月3日:埼玉県和光市)」で、新しいコネクテッドサービスが説明された。
これは、これまで自動車産業界で議論されてきたコネクテッドカーの概念を超えた、新しいサービス事業を目指す動きとして注目される。

そもそもコネクテッドカーという言葉には様々な意味が含まれている。一般的にはクルマの車載システムをWi-fiやBluetooth、または電話回線を通じて、通信機器や通信インフラと電気信号を介してつなぐことを意味する。
その中で、米Appleや米Google(現在のアルファベット)が2014年頃から提唱し始めた車載システムとスマートフォンとの連携がある。AppleはCarPlay(カープレイ)、GoogleはAndroid Auto(アンドロイドオート)。これは、音楽、映画やテレビ番組などの音声・画像コンテンツの再生や、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)など、車内におけるエンターテイメントに関する分野で、情報(インフォメーション)と関連づけてインフォテイメントと呼ばれる。
インフォテイメントでは、車載器OS(オペレーティング・システム)での覇権争いが活発化しており、Google (アルファベット)によるアンドロイドOSのシェアが近年、拡大している。
ホンダは日系メーカーの中ではいち早く、CarPlay、Android Auto、そして車載器のアンドロイドOS化を進めた。

一方、自動運転についてもコネクテッドカーが大きな影響を及ぼしている。この場合のコネクテッドとは、車両の位置や走行情報を、外部インフラを通じてビッグデータ化することを指す。高精度な三次元地図の生成、または気象状況や事故情報を通じて、車両の自動走行、または運転支援システム(ADAS)の精度を上げることが目的だ。車両(V:ヴィークル)を中心に、車車間の通信をV2V、道路側のインフラとの通信をV2Iと呼び、これらの総称としてV2X(ブイ・ツー・エックス)としている。
ホンダは2020年には、日本の高速道路の渋滞時でレベル3の自動運転を実用化すると発表。レベル3では自動運転の主体は運転手からクルマのシステムに移る。そのため、運転手はクルマのシステムから”運転の転移”を通知されるまでは、車内での読書やスマートフォンの利用などの”セカンドタスク”が事実上、許可される。V2Xによって、走行状況を常に管理できることで可能になる。
こうしたインフォテイメントとV2Xに加えて、今回のホンダミーティングでは新しいコネクテッドサービス「eMaaS (イー・マース)」が発表された。

 eMaaSで新事業を狙う

eMaaSのeとはエネルギーサービス、そしてMaaSはモビリティ・アズ・ア・サービスを指す。
MaaS(マース)という言葉は近年、公共交通でよく聞かれるようになった。鉄道・バス・タクシーなどの走行データをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)共通化することでオープンデータ化し、ベンチャー企業を含めた新しいビジネス戦略を構築するという概念だ。2016年~2017年から北欧やドイツなどで政府と民間企業の連携が本格化して社会実装が進んできた。
これに対して、ホンダがeMaaSの中で定義するMaaSは、ホンダが所有する電動車という限定的な括りとしているのが特徴だ。今秋以降に日本でも発売予定のEV「HONDA e」を筆頭に、燃料電池車や超小型モビリティ、さらには医療や介護用の小型ロボットなどを、ホンダとしてMaaSに位置付けている。電池については、超小型モビリティや小型ロボット向けの取り外しや持ち運び可能なMPP(モバイル・パワー・パック)を使う。すでに、スズキとヤマハ発動機との間では、MPPを基盤として電動モビリティ向け電池の標準化で合意している。
一方で、再生可能エネルギーを主体とする電力配給の仕組みをEaaS(エネルギー・アズ・ア・サービス)という概念で括る。
そして、EaaSとMaaSを合体させたのがeMaaSだ。電動モビリティとエネルギーサービスをつなぐことで、ホンダが求める「人生を楽しく、生活を便利する、自由な移動」を目指す。

 スマートグリッドを超えることができるか?

ホンダが提示した図表によると、eMaaSを技術的なプラットフォームとして描く。eMaaSでは、電動モビリティからの走行状況やバッテリー残量を含めた使用状況を集める。それをビッグデータ化して解析し、車両の充電インフラ、充電インフラと電力の系統事業者や発電事業者、または電力の小売り事業者がWin-Winになるようなビジネスを目指すという。
こうした図表、どこかで見たような覚えがある。
そう「スマートグリッド」だ。2010年前後に日産リーフや三菱i-MiEVの量産が始まった頃、EVを簡易的な定置型電池に見立てて電力網と系統連携するとして、東京電力などの大手電力、大阪ガスなどの大手ガス、また三菱重工など重電メーカーなどがこぞって参入したビジネス領域だった。
しかし、2011年3月11日の東日本大震災の後、原子力発電所が相次いで稼働停止、または再稼働の見通しが立たなくなり、日本の電力需要は液化天然ガス(LNG)による火力発電のシェアが一気に上昇。太陽光や風力に由来する再生可能エネルギーの活用の議論が一気に冷めてしまった。その中で、スマートグリッド構想も塩漬けになったという経緯がある。

今回、ホンダが改めて提唱するeMaaSは、スマートグリッドの焼き直しではない。
最新のコネクテッド技術を投入し、また早期の社会実装を可能とするビジネスモデルによって裏打ちされている。すでにフィリピンやインドネシアなどでは、モバイル・パワー・パック(MPP)を使った実証試験が始まるなど、eMaaS実現に向けた動きが加速している。今後、機会があればホンダeMaaS社会実証の現場をレポートしてみたい。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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