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ITS業界記事 COVID-19で自動車・モータースポーツ産業にバーチャル時代到来

 自動車産業でのバーチャルイベント、さまざまな形で開催

新型コロナウイルス感染症(COVID-19) は、自動車産業に甚大な影響を及ぼしている。
ロックダウン(都市封鎖)などの影響で、直近の3月では、市場規模が第一位の中国では新車販売台数が前年同月比43.3%減、また第二位のアメリカでは38.4%減と大きく落ち込んだ。この他、感染拡大が止まらない欧州各国でも自動車販売の落ち込みは激しい。

4月中旬になり、中国では地域によって経済活動が徐々に回復しはじめ、アメリカでもトランプ政権が各州に経済活動再開に向けたガイドラインを示している。
とはいえ、有効なワクチンの量産にまだ時間がかかるため、日本を含めた世界各国で、新型コロナウイルス感染症との闘いは2021年を見据えた長期戦の様相となっている。

このように自動車産業界の先行きが不透明な状況の中、将来に向けた明るい話題もある。
様々な分野でのバーチャルなイベントの開催だ。

まずは、バーチャルなモーターショーだ。
3月に開催予定だったスイス・ジュネーブモーターショーが中止となった。そこで、一般公開に先駆けて実施予定だった3月2日~4日のメディア向け商品発表を、バーチャルプレスデーとしてインターネット上で行ったのだ。
だたし、開催確定から実施まで3日間しかなく、コンテンツとしてはメーカー毎にかなり差があった。
例えば、ダイムラーは本社があるシュツットガルトの特設スタジオで、ジャーナリストと開発担当者の対話形式をとった。その他、地元欧州メーカーも各社の地元で収録した独自映像を流した。
一方、日系自動車メーカーは、一部の発表を行わず、ブランドイメージ全体を訴求するような映像コンテンツにとどめた。

こうしたインターネットのみを使った新車発表は、日本でも行われた。
日産は横浜本社で2020年2月21日、軽自動車の新型「ルークス」記者発表会を、会場に記者がいない状態でインターネット中継した。日産の国内営業担当役員が挨拶した後、車両開発者が進行役の女性と一緒に車両を見ながら技術やデザインについてツアーを行う形式とした。

結果として、ジュネーブショーのバーチャルプレスデーで発表した新モデルも、日産「ルークス」も、メディア各社やSNSを通じた情報発信量は、リアルなプレスデーや発表会をした場合と比べて大差はない印象がある。
近年、世界的に自動車雑誌の発行部数が減り、新車やアフターマーケットなどクルマに関する情報源がインターネットやSNSに移行している。また、モーターショーでは展示が大規模化し、コストは数億から数十億円かかる割には、新車の実売効果が明確化できないため、出展を見合わせるメーカーが増えていた。
社会変化とコストパフォーマンスを考えると、将来的には、モーターショーや新車発表の場が一気にバーチャル化する可能性も否定できない。

この他、自動車メーカーが所有する自動車博物館のバーチャルツアーでもシステムの高度化が進む。ジュネーブショーのバーチャルプレスデーとほぼ同時期、ダイムラーはメルセデス・ベンツ博物館のバーチャルツアーをアップデートして公開している。

 eモータースポーツにもプロレーサーが参入

新型コロナウイルス感染症は、モータースポーツにも多大な影響を与えている。海外では世界最高峰のフォーミュラ1、日本国内ではフォーミュラニッポンやスーパーGTで2020シーズン開幕の目途が立っていない。
長引くレースのブランクを埋めるべく、レース主催者は、リアルレースの代替案として、プロレーサーが参加するバーチャルレースを開催している。
以前から、こうした試みはレースファン向けのアトラクションとして開催されてきたが、最近ではプロレーサーにとって、遊びとしてのゲーム感覚では済まされない状況になってきた。
レースファンとしては、バーチャルレースでもリアルレースと同等の、高いマシンコントロール能力をプロレーサーに求めるようになったからだ。そのため、バーチャルレースでの勝敗について、チームやスポンサーの関心度が上がってきた。

そうした中、驚くべき出来事がアメリカで起こった。
アメリカで最も人気が高いモータースポーツのNASCARで、バーチャルレースに参加したトップレーサーが、無線でチーム関係者に差別的な言葉を使い、ファンのなかでこのレーサーに対して非難が集中した。
事態を重くみたチームスポンサーのマクドナルドは、チームからの撤退を示唆。そのため、チームはこのレーサーを解雇した。
近年、モータースポーツ界ではテレビ中継への配慮から、レース中のチーム無線でも放送禁止用語の扱いについて注意を払ってきており、バーチャルレースでも社会通念に対する配慮が求められるようになったといえる。

また、バーチャルなモータースポーツはプロだけではなく、個人向けでも年々市場が拡大している。eモータースポーツと呼ばれるビジネス分野である。
トヨタは4月、グランツーリスモSPORTを採用したドライビングシミュレーターを完備したeモータースポーツ専用スタジオを国内で開設。
トップレーサーと一般参加者がオンラインでレースする様子をYouTubeで配信したり、グランツーリスモSPORTのトッププレイヤーによるオンラインレッスンの配信などを行う。
新型コロナウイルス感染症は結果的に、自動車産業のバーチャル化を進めることにつながった。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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