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ITS業界記事 第1回「ジャパンモビリティショー」の現場で感じたこと

 全日本自動車ショウからスタートした開催の歴史

今から69年前の1954年、東京・日比谷公園内広場で第1回全日本自動車ショウ(▼筆者注:ショーではなくショウ)が開催された。
当時の資料によれば、参加者は254社で展示車両は267台だったが、そのうち乗用車は17台に過ぎなかった。10日間での来場者総数は54万7000人。その後、開催地が旧後楽園競輪場フィールド、東京・晴海の日本貿易センター、千葉県・幕張メッセ、そして東京ビッグサイトと場所を換え、2019年に第46回東京モーターショーを迎えるという変遷を辿った。
2019年当時を思い出すと、東京ビッグサイトで最も広いスペースがある東ホール全体が、翌年開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックのプレスルームとする準備のため使えず、西ホール、青海会場、そして今はなきトヨタ商業施設メガウェブでの分散開催となった。
続く2021年は新型コロナウイルスの影響を考慮して東京モーターショーは、史上初めて中止となった。
そして今回、東京モーターショーを改めて、第1回ジャパンモビリティショーとしての開催となったわけだ。

 ツアーガイドを務めたからこそ得られた来場者の声

開催準備段階から、自動車のユーザーや自動車販売店はもとより、出展を計画していた自動車メーカーや自動車部品メーカー、さらには新規出展するベンチャー企業など、「どのような演出をするべきか?」大いに迷ったという。 ある自動車メーカーの場合、企画段階では「クルマそのものを展示しないこと」も選択肢のひとつとして挙げられていたようだ。

では、実際のところ、ジャパンモビリティショーは成功したのか?
来場者はどのような感想を持ったのか?

筆者は10月25日の報道陣向けプレスデーのほか、主催者である日本自動車工業会のオフィシャルツアー企画「自動車ジャーナリストと巡るジャパンモビリティショー2023」のツアーガイドも務めた。
このツアーは2009年開催の第41回東京モーターショーから、日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員の有志によって実施しているものだ。
この第41回東京モーターショーは、2008年にアメリカを基点にグローバル経済に大きな影響を与えた、日本ではリーマンショックとも呼ばれる金融危機の影響が大きく及んだイベントとなった。具体的には、出展社数は前回比で半減し、来場者数も40%以上減少するという打撃を受けてしまった。
出展社の半減が濃厚となった時点で、日本自動車ジャーナリスト協会では主催者の日本自動車工業会と協議し、来場者に対する新たなサービスとしてガイドツアーを提案したのが同ツアーの始まりである。
それ以降、筆者は毎回、同ツアーのガイドとして来場者の生の声を聞いてきた。

今回のツアーについて、筆者が受け取ったツアー参加者を含めた来場者の声を振り返ると、概ね「思ったより楽しかった」というポジティブな印象だ。
この「思ったより」というフレーズには、「あまり期待していなかったが…」というマイナスイメージを出発点として見ていた人が少なくなかった、という見方もできるかもしれない。
とはいえ、来場者の多くが「冷静に時代の変化を捉えようとしている」という印象もあった。

 見極めの目を持つようになった来場者

その背景として考えられるのは、2010年代後半以降、巷に広がったCASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなどの新サービス・電動化)、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)、そして「2050年カーボンニュートラル」といったキーワードについて、「現実として、何がどうなりそうか?」という予想を、来場者のひとりひとりが自分なりに理解する段階になっているからではないだろうか。

だからこそ、自動車メーカー各社によるジャパンモビリティショーでの演出に対して、来場者の多くは十分に余裕ある気持ちで会場内を見ることができたのではないだろうか。

具体的に言えば、日産がかなり派手なエクステリアによってデフォルメしたミニバンやスポーツカーについても、「これらが実用化されることはなく、ある種のエンタメだ」と割り切って鑑賞していた。

トヨタについては、レクサスを含めて舞台上に展示された全車がEVであった。
それでも、来場者の多くが事前の各種報道を通じて「いますぐにトヨタやレクサスが一気にEV化することはない」という理解があり、「自分もそのうちEVユーザーになるのかもしれないが、世の中の流れをじっくり見極めよう」という視点があった。
その上で、レクサスブースで展示された、高圧によるアルミダイキャスト(鋳造)製法のひとつである「メガキャスト」や、2027年以降に量産される新規開発中のリチウムイオン電池についての説明を聞いていた。

ホンダでは、いわゆる空飛ぶクルマである「e-VTOL」や、GMおよびGMの子会社であるクルーズとの共同開発プロジェクトの自動運転レベル4タクシー「オリジン」などについて、その実用化に「具体的な課題は何か?」という冷静な視点を持っていた。

 一般向け展示に転じたティア1ブースが連日の大盛況

一方で、「自動車ジャーナリストと巡るジャパンモビリティショー2023」としては対応しなかった「トウキョウ フューチャー ツアー」については、筆者も来場者のひとりとして感銘を受けた。
ライフ、災害/防災、プレイ、フードという4つのエリアで構成されていたが、各エリアでの出展が、現実の社会状況を踏まえて十分に練り上げられた内容であったからだ。その上で、エンターテインメント性があることで、ワクワクしながら各エリアを巡ることができた。

さらに驚いたのが、西ホール4階のスペースだった。
自動車産業界では、ティア1と呼ばれる大手自動車部品メーカーによる出展ブースが並んでいたのだが、どのブースも平日でも休日でも、ほぼ満員御礼なのだ。
通常、こうしたティア1は自動車専門の見本市などで最新技術を細かく展示し、対象となる来場者は自動車メーカー等であり、あくまでも商談の場として設定してきた。
それが今回は、自社の技術をより分かりやすく一般の人に楽しんでもらおうという企画に転じたことで、広い世代が「この会社って、どんなことしているの?」という素直な視点でブースを訪れているようだった。

主催者の日本自動車工業会によれば、第1回ジャパンモビリティショーの来場者数は111万2000人。当初目標の100万人を超えただけではなく、来場者の多くにとって実りある内容だったと言えるのではないだろうか。
だたし、まだ第1回であり、反省点も当然少なくない。
次回に向けて、ガイドツアーを含めてカイゼンに心がけたい。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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