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ITS業界記事 初披露が続々!東京オートサロン2022の現場レポート
~舞台裏を知る筆者が約40年の歴史を振り返る~

 2年ぶりにリアル開催

コロナ禍の影響で昨年はオンラインでのヴァーチャル実施となった自動車関連イベント「東京オートサロン」が、2年ぶりに千葉県幕張メッセでリアルな形にて開催された。
主催者発表によると、ビジネスデー及び報道陣向け公開となった開催初日1月14日の動員数は2万4934人、また一般公開日の15日と16日を加えた3日間の累計では12万6869人だった。
2021年秋に開催予定だった東京モーターショーが中止となったこともあり、直近では国内最大級の自動車関連イベントである。

東京オートサロンは自動車関連出版社・1社による開催であり、自動車メーカー全社が加盟する日本自動車工業会主導の東京モーターショーとは格付けが大きく違う。
ただし、2010年代に入ってから世界各国で開催される、フランス・パリ、ドイツ・フランクフルト、スイス・ジュネーブ、アメリカ・デトロイトやニューヨーク等の大規模モーターショーは軒並み、出展社数や入場者数が下降傾向となり、各主催者はイベントの内容をEVなどの新分野に大きく転換したり、またはIT企業やファッションブランドとの連携などを模索しているが、未だに新戦略での成功事例を見出せていない状況だ。

こうした中で、カスタマイズカーやチューニングカーといった、いわゆるアフターマーケット向けを主体とした自動車イベントでは、アメリカのSEMAショーや、東京オートサロンなどが安定した集客を実現しており、その実績を踏まえて自動車メーカーはそれらイベントに継続的に出展している。

 ハチャメチャから時代変化に沿って軌道修正

時代を振り返ってみると、筆者はこれまで40年以上に渡り、世界各地のモーターショーやカスタマイズカーショーを現地取材し、その変遷を肌身で感じてきた。
特に、東京オートサロンについては、その前身として1983年に立ち上がった東京エキサイティングカーショーの時代から、主催者の出版社と筆者との間で様々な関係があったことで、1987年の東京オートサロンへの名称変更を経て変化し続けてきたイベントの舞台裏を承知している。
正直なところ、80年代の東京エキサイティングカーショー及び東京オートサロンの現場は、ハチャメチャだった。全国各地から、車高を極端に落としたシャコタンのクルマが集結し、警視庁も神経を尖らせるという事態にもなった。

90年代に入ると、エンジンやサスペンションのチューニングや、エアロパーツと呼ばれる外装パーツなどで、全国各地に有名ショップやチューニングパーツ製造メーカーが登場し、各社が東京オートサロンで顧客と1案件あたり数百万円の商談を行う大規模ショールームへと変貌していく。
こうした状況を、自動車メーカー各社は「あくまでもアフターマーケット向けのトレンドであり、メーカーが直接関与するべき事業領域ではない」という見解のもと、東京オートサロンを遠巻きに観ていた。

それが2000年代になってから大きく変わる。
背景には、チューニングカーブームの急速な冷え込みがある。排気ガス規制や車両保安基準の改訂、さらにはトレンドとしてハードなチューニングを好む若者層が減っていった。
時代変化は、自動車メーカー各社にも及ぶ。新車に対する多様性を持たせるため、内外装の仕様や色などを拡充し、またメーカー直系の部品メーカーが新車向けオプションパーツのラインアップを拡大していく。結果的に、自動車メーカーとしては東京オートサロンはユーザーやディーラー向けの商品訴求の場としての使い勝手が良くなり、メーカー専用の展示ブースを設置するようになっていく。

さらにいえば、2000年代後半以降、日系メーカー各社の新車ラインアップでスポーツカーの存在感が希薄となり、またモータースポーツのファン減少も目立つようになる中、スポーツカーとモータースポーツの受け皿となるイベントとしても、メーカー各社が東京オートサロンを活用するようになる。
他方、東京モーターショーは、電動化、自動運転、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)など、新しい時代に向けた社会全体を俯瞰するようなイベントに転じており、スポーツカーやカスタマイズカーの存在が目立たなくなってきた。
一般ユーザーの視点で「ワイワイガヤガヤしている東京オートサロンの方が、生真面目な雰囲気がある東京モーターショーより楽しい」と映るのは、自然なことではないだろうか。

 時代の変わり目に、初披露が続々登場

東京オートサロン2022では、メーカー各社が相次いで新型スポーツカーを出展した。
最も目立っていたのは、日産「フェアレディZ」だ。すでに北米市場向けモデルは現地でお披露目されているが、今回は右ハンドルの日本仕様が初公開された。初代(S30)を彷彿させるエクステリアデザインに、老若男女問わず来場者の多くが強い関心を持っていた。
ホンダは「シビックタイプR」のほぼ量産レベルのプロトタイプ、またトヨタはさらに高性能化した限定発売車「GRMNヤリス」を初公開した。

少し変わったところでは、スバルの特殊部品開発やモータースポーツ活動を担うSTI(スバル・テクニカ・インターナショナル)が世界屈指の難コースとして知られるドイツ・ニュルブルクリンクでのタイムアタックを目的とするEV四輪駆動車「STI E-RA CONCEPT」を世界で初めて公開した。
同じくEVでは、三菱が日産と共同開発した「K-EV コンセプトXスタイル」を初公開した。外観は量産型eKクロスとほぼ同じ。電池容量は20kWhで満充電での航続距離は約170kmとし、2022年度の早い時期に発売する予定だ。

また新しいカスタマイズ領域としては、近年のキャンピングカーブームを受けて、ダイハツが商用車「アトレー」で車中泊などにも対応の正規オプションパーツに加えて、ルーフテントなど社外品を装着したコンセプトモデルを出展した。
自動車メーカー以外の中小メーカーでは、スズキ「ジムニー」やトヨタ「ランドクルーザー」など量産車で新車の納期が長い人気車種でのカスタマイズパーツの展示が目立った。
今回、会場内をくまなく回ってみて「全体的におとなしい」という印象を持った。
量産車に比べるとEVシフトが鮮明ではないが、量産車のEVシフトがアフターマーケットに大きな影響を及ぼすことは明らかだ。

アフターマーケット関連事業者としては、世の中の変化を注意深く見守りながら、生き残りをかけた”次の一手”を考えている真っ最中なのではないだろうか。
東京オートサロンは今、新たなる時代変化に直面している。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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