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ITS業界記事 シェアリングエコノミーの急速発展 ~商用シェアリングや、市街地交通の地下化~

 第2回New Mobility Worldは大盛況。3つの「V」とMaaS(Mobility as a Service)

ドイツのフランクフルトで開催中のIAA(国際自動車ショー:通称フランクフルトモーターショー)で併催されているNew Mobility Worldは大盛況だった。
New Mobility Worldは次世代の交通や自動車産業に関して、産学官が共同で協議している実情を、ショーに訪れる自動車業界関係者に紹介するイベントだ。
2年前のフランクフルトモーターショーで開催された第1回では、主催者の期待を大きく裏切り、来場者の数は極めて少なかった。

ところが、今回の第2回は連日、人の流れが切れることがないほどの大盛況となった。
こうした変化はまさに、自動車産業界がいま直面している時代変革の波の影響を示唆している。

今回のIAAでは、ジャーマン3と呼ばれるダイムラー、BMW、そしてVWグループの地元三大メーカーがこぞって、電気自動車(Electric Vehicle :EV)、自動運転(Automated Vehicle: AV)、通信によるクルマの社会のつながり(Connected Vehicle: CV) での量産車(Production Model)やコンセプトモデルを発表した。

これら3つの「V」は世界の自動車車産業界でのトレンドで、ボッシュ、コンチネンタル、デルファイなどの自動車メーカー大手が製品開発を急いでいる。
また、3つの「V」と密接に連携するのが、サービスの領域だ。これを一般的に、MaaS(Mobility as a Service)という。

そうした中、IT、電機、そして通信の大手も3つの「V」に関する事業を拡大させており、第2回New Mobility Worldでは半導体大手のクアルコムのCEOも基調講演を行っていた。

 ライドシェアリング(乗用)から商用シェアリング(物流)へ

MaaSという概念がカバーする事業の領域はとても広いが、最も注目されているのがシェアリングだ。
シェアリングは近年、AirB&Bなどによる個人所有の住宅をレンタルする民泊や、UberやLyftなどの個人所有車をタクシーのように使うライドシェアリングの利用が、欧米や中国、東南アジアで急速に増えている。
第2回New Mobility Worldでも、欧米のライドシェアリング企業、また中国で昨年から急激に成長している自転車シェアリングに関する企業などが出展した。

こうした中で、今後のトレンドとして期待されているのが、商用シェアリングだ。
ここでの「商用」とは、「乗用」に対する意味であり、具体的には物流を指す。

この分野において、現在までに行われている実証実験の例としては、アウディが物流大手のDHLと連携して、個人所有車のトランクを電子キーで開錠して宅配する商品をトランク内に届けて施錠するケースなどがある。
しかし、民泊やライドシェアリングのような、C2C(顧客間)ビジネスを仲介することとは違い、基本的にはB2B(事業者間)で事業を構築し、そのサービスを顧客が受けるというシステムである。C2Cでは、スマートフォンのアプリの開発を中心にビジネスを構築すれば事業化までの期間は短いが、B2Bとなると既存の企業間、または行政機関との”すり合わせ”が必要であり、事業化までの期間が長くなってしまう。

 市街地での交通がすべて地下化?未来都市における物流シェアリング

物流を中心としたシェアリングについて、先進的な計画を推進しようとしている事例がシンガポールと米マサチューセッツ州ボストン市だ。

第2回New Mobility Worldでは、シンガポールの交通省と、ボストン市の交通政策のアドバイザリーである世界経済フォーラムの関係者が講演し、未来都市における物流シェアリングについて説明した。
そのうち、興味深かったのはシンガポールの計画で、市街地での交通をすべて地下化するというもの。地下1階は商用バスやタクシー、そして乗用車は乗り入れ台数制限を行う。地下2階はショッピングモールでの、その裏手に物流専用の交通路を確保する。さらに、複数の店舗が、配送を行う物流業者のサービスをシェアリングするという。

シンガポールは、総面積でドイツのベルリン市より少なく、そこに500万人が集中して住み、各種の事業活動をしているという特殊な状況に置かれている国だ。そうした交通課題に対して、シンガポール政府としては今後、EV、AV、CVの最新技術を積極的に活用し、新しい物流などを含めたMaaSの実用化を進める。
日本でも今後、MaaSに関する具体的な事業化について、自動車、IT、通信、そして物流などを巻き込んだ事例が生まれることを期待したい。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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