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ITS業界記事 アンドロイド・オートモーティブ、V2Xに注目~独フランクフルトモーターショー2019をレポート~

 社会の変革が与えた独フランクフルトモーターショー2019への影響

ホンダ以外の日系メーカー、またGMやFCA(フィアット・クライスラー・オートモーティブ)が撤退するなど、独フランクフルトモーターショー2019(IAA 2019)は時代の大きな節目を迎えた。
シェアリングエコノミーに代表されるような新規ビジネスや、自動運転やコネクテッドカーなどの新技術によって、「人とクルマ」「クルマと社会」との関係が大きく変わってきた。そうした社会の変革が、世界を代表するモーターショーに大きな影響を与えたのだ。
自動車産業の先進国、ドイツでいま何が起こっているのか?会場内で筆者が注目した案件について紹介する。

 自動運転ブームの沈静化

自動運転に関する展示が目立たなくなった。
その理由は、オーナーカー(自家用車)での自動運転で、レベル3以上の量産化が難しいからだ。
ボッシュやコンチネンタルなどドイツ系大手部品メーカーは、当面はレベル2の高度化、または運転速度を低速にするなど限定条件付きのレベル3で量産化を目指す。
自動運転では、レベル0からレベル5までの6段階ある。レベル0は手動の運転を指し、レベル1とレベル2では運転の主体は運転者で、高度な運転支援を行う。レベル3以上では、運転の主体は自動車のシステムに移るが、レベル3では運転の継続が難しいとシステムが判断した場合、手動運転に戻る。
運転の主体が人から車に移るレベル2とレベル3の間には「社会実装(量産化)する上での壁」がある。自動車メーカー各社はその壁が極めて大きいことを、自動運転の公道試験を進める中で実感している。

一方、サービスカー(公共交通機関)の領域ではレベル4以上での社会実験が進む。しかし、ここにも壁が存在する。自動走行だけではなく、相乗り(ライドシェアリング)に対する規制緩和など、自治体の受け入れ態勢が地域によって大きな差があるのだ。こうした状況についてフォルクスワーゲン関係者は「EU全体でも、ドイツ国内ですら統一した見解がない。当分の間、解消されないと思う」と言う。
このような状況もあり、オーナーカー、サービスカーともに、これまで急激な拡大路線だった自動運転の量産化に向けた開発のペースがスローダウンしているのだ。

 サービス領域でのデータのプラットフォーム化

自動運転や電動化の発達に伴い、車両データや顧客データに関して自動車メーカー共通のプラットフォームが重要になっている。そうした観点で2つの流れを紹介する。

アンドロイド・オートモーティブ(車載OS)

車載OSで、アンドロイドの存在感が高まっている。
グーグル(親会社:アルファベット)によると、同社がアンドロイド・オートモーティブと呼ぶ車載OSのシェアは45%。採用している自動車メーカーは、ホンダ、日産、三菱、BMW、フィアットなどに限られているが、自動車部品メーカーではボッシュ、デンソーなど各国の大手が名を連ねている。
時計の針を少し戻すと、グーグルが自動車産業界と最初に関わりを持ったのは2005年で、一部の自動車部品メーカーとグーグルマップを使ったソフトウエアを共同開発、提供した。その後、2010年には車載器に対してグーグルマップのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開して、カーナビゲーションでのオープンソース化を実現した。さらに、2015年にはアンドロイド・オートで自動車産業界に独自路線で参入した。また、携帯電話のアンドロイド・フォーンと車載器をコネクテッドする技術的なルール作りをした。これは、アップルの「iOS in the car (後のカープレイ)」への対抗策だった。

そして2020年に本格化させるのが、アンドロイド化した車載OS「アンドロイド・オートモーティブ」だ。2015年のアンドロイド・オート発表時に、車載OSへの本格参入を発表し、先に紹介したような自動車関連各社とすでに協業している。現時点でのアンドロイド・オートモーティブはカーナビゲーション、動画配信、SNSなどインフォテイメントの領域が主体だ。インフォテイメントとは、インフォメーションとエンターテイメントとの融合を意味する。
今後、アンドロイド傘下の自動運転開発企業Waymoなどと連携して、車両の運動性能に関わる領域、またはライドシェアリングなどサービス領域に、アンドロイド・オートモーティブの活動範囲を広げる可能性がある。

コンチネンタルが狙うV2Xでのシステム融合

コンチネンタルは「車両と車両の通信(車車間通信:V2V)」に「車両とインフラの通信(路車間通信:V2I)」を加えたV2Xについて新しい発想を具現化しようとしている。
ここで、同社の説明によると、V2Xは現在、世界で大きく2つのシステムが存在する。
ひとつは、欧米や日本で広く使われているDSRC(狭域通信)を用いたもの。日本ではETC(自動料金収受システム)に活用されている。DSRCには5.8GHz帯域、5.9GHz帯域、そして700MHz帯域など国や地域によって使用される周波数帯域が違う。

もうひとつは、電話回線を用いたセルラー方式によるTCS(テレマティクス・コントロール・システム)。こちらは中国などでの需要が多い。
これら2つの方式をひとつの基盤にまとめるシステムを、コンチネンタルでは「ハイブリッドV2X」と呼ぶ。
タブレットを使ったデモンストレーションでは、緊急車両が接近した際のアラート事例や、見通しの悪い交差点での事例などを紹介。「世界各地で様々な車両が混在する世の中で、今後は“ハイブリッドV2X”が実用化されるのは当然だ」(同社の開発担当者)という。
すでに初号機によるテストは完了しており、2~3年後を目途に量産化を狙っている。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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