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ITS業界記事 SIP第二期、自動運転で重要性を増すV2X

 東京オリンピック延期の影響は?

日本の自動運転に関する戦略が第二段階に入り、その実状について関係者から詳しい説明を受けた。
まずは、自動運転の実用化の流れについて、過去10数年間の世界の動きを振り返ってみたい。
米国防高等研究計画局(DARPA)が2000年代に3回実施した、無人車レースが世界的な注目を集めた。技術的には、レーザーを360度方向に照射するレーダー「ライダー」が量産化のきっかけになった。

その後、無人車レースに参加したスタンフォード大学、カーネギーメロン大学、マサチューセッツ工科大学などのロボット研究者などが、グーグルやアップルなどのIT大手、またボッシュ、コンチネンタルなど自動車部品大手に転職し、自動運転の実用化に向けた開発の基盤を作った。
また、自動車製造台数と販売台数で世界一となった中国でも政府が主導する自動運転開発計画が始まった。
こうした世界各地での自動運転実用化に向けた動きに対して、日本は出遅れ感を感じていた。

そこで、内閣府が主導し産学官連携で行う次世代技術研究の国家プロジェクト、戦略的イノベーション創造プログラム(通称SIP)の一環として自動運転が組み込まれた。
実務では2014年からSIP第一期が始まった。
目標として掲げたのは、2020年の東京2020(オリンピック・パラリンピック)で、東京臨海部を世界に向けた自動運転技術のショールームとすることだった。
そのために自動車技術、通信技術、人間工学、社会学、法務など、様々な領域を総括した集中的な議論が進められてきた。
ところが、新型コロナウイルス拡大の影響で、東京2020は1年延期。

その影響については、SIP自動運転のプログラムディレクターで、トヨタ自動車・先進技術開発カンパニー・フェローの葛巻清吾氏は「自動運転関連のイベントが中止されたが、緊急事態宣言の解除後に実証試験は再開している」と大筋では東京2020延期の影響は少ないとの見解を示す。
当初の予定では、日本自動車工業会が主催し、自動車メーカー各社が参加するメディア向け自動運転・試乗会を2020年7月に東京臨海部で開催予定だった。東京湾地区での実証試験は2019年10月から実施しており、当初は2020年秋までとしていたが、現状では2021年3月頃まで行うという。
そうした中、2020年9月上旬、一部メディア向けに東京臨海部での実証試験の視察が行われ、筆者も参加した。

  760MHz、狭域通信(DSRC)がカギを握る

午前9時過ぎ、霞が関の中央合同庁舎第4号館で、葛巻氏による東京臨海部でのSIP自動運転実証に関するプレゼンテーションを受けた。

その後、ミニバンでお台場地区に移動した。
お台場地区では、狭域通信(DSRC)と自動運転車によるV2I(路車間通信)実証試験に関する説明を受けた。
使用した車両は、金沢大学がSIPから業務委託されて作りあげた、レクサスRX450hをベースとしたもの。画像認識技術では、長距離、中距離、近距離それぞれに単眼カメラを用いている。車体各所にライダーと周波数帯域77GHzのミリ波レーダーも備える。

衛星測位については、古野電気のGNSS+自律航法ユニット(PT-G1)を使用している。
金沢大学の菅沼直樹教授は「(ここでの実証では)衛星測位の位置精度は、数メートルで十分」と話す。
その上で、実証試験のキーポイントとなるのが、周波数帯域760MHzでのDSRCだ。東京湾地区周辺で約30カ所を設置。全国では約100カ所ある。

お台場実証では、信号機の色、その色が残り何秒続くのか、といった情報を車両側に定常的に送信している。「逆光など、カメラで信号機の色を認識しづらい状況もあり、交差点でのDSRCは自動運転の実用化に向けて不可欠な要素だ」とSIP関係者は主張する。
お台場実証の視察後、首都高速1号羽田線で料金所付近に移動した。ここでは、本線の交通の状況を、合流する車両に通信で伝える実証を行っている。

 磁気マーカーで自車位置を測定。 燃料電池バスを使った自動運転

次に、羽田空港第三ターミナルにほど近い、天空橋駅に直結するHANEDA INNOVATION CITYに移動した。商業施設、ホテル、会議施設、オフィスなどが集約する国際産業拠点として2020年7月に開業した。ここには、岩谷産業の水素ステーションも開設される。

実証試験では、トヨタと日野自動車が共同開発した燃料バス「SORA」を自動走行車に改造して使用している。走行状況は、現状では自動運転レベル2であり、将来的には運転席に誰もいない状態でのレベル4での実用化を目指す。
自車位置の測定はGPS/GNSSを使用せず、道路に埋設した磁気マーカーを車両側のセンサーが検知して行う。バス専用レーンも設けているが、一般トラックなどが駐車している場合は一時的に手動運転に切り替えてから、再びバス専用レーンに戻り自動運転を再開した。車体側には、カメラ、ライダー、ミリ波レーダーも備えている。
トヨタ関係者によると「現在はあくまでも実証試験であり、運営事業者の選択など、実用化に向けた具体的な話は決まっていない」という。

今回の視察を通じて、第二期となったSIPはV2I(路車間通信)の増設を踏まえたV2Xに焦点が当たっていることを再確認できた。
日本自動車工業会は2021年3月頃を目途に、今年中止となった自動車メーカー各社参加の報道陣向け自動運転・試乗会などの開催を計画している。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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