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ITS業界記事 新しい『官民ITS構想・ロードマップ』の在り方とは?
~デジタル庁で始まる『人中心』『社会中心』の議論~

 『官民ITS構想・ロードマップ』のこれまで

いま、『官民ITS構想・ロードマップ』の大幅改訂に向けた準備が進んでいる。

官民ITS構想・ロードマップとは、政府が2014年6月に、制度面を含むITS(高度道路交通システム)と自動運転に係る国家戦略として、2030年を視野に策定したものだ。
当時、アメリカを中心に、自動運転の量産化に向けたベンチャー企業等での研究開発が急速に進んでいた。米自動車技術会(SAE)、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)、そして独連邦道路交通研究所(Bast)が自動運転レベルについて指標を公開するなど、アメリカとドイツを中心に自動運転に関する本格的な協議が始まった時期であった。

日本政府は、2013年6月に『世界最先端IT国家創造宣言』をおこない、そのなかで内閣府と関係省庁が横断的に連携するためのロードマップの作成を進めた。
そして内閣府のIT本部道路交通分科会での議論を経て、『官民ITS構想・ロードマップ』が誕生した。
以降、2015年から2020年まで6回改訂されてきた。
その間、政府の未来投資会議では、日本の産業競争力強化の観点で、自動運転に対して政府が強く後押しすることを、当時の安倍晋三首相が明らかにした。

また、2014年から内閣府が開始した、オールジャパン体制で様々な新領域の研究開発を産官学連携で行う『戦略的イノベーション創造プログラム』(略称SIP)においても、自動運転ワーキンググループが結成された。
内閣府を中心に、経済産業省、国土交通省、総務省、警察庁など関係各省庁に横串を刺す体制として、高精度三次元地図、法整備、国際協調、クルマと様々なものを通信連携するV2Xなどについて、第一期(2014年度から2018年度)、さらに第二期(2019年度~2022年度)の計8年間に渡り協議を続けてきた。

具体的な成果としては、自動運転レベル3の実用化に向けて、道路交通法と道路運送車両法の改正が挙げられる。量産車としてはホンダが高級セダン「レジェンド」で世界初の自動運転レベル3による型式認定を受け、限定数をリース販売した。
また、道路運送車両法と道路法の改正によって専用空間における自動運転レベル4での無人自動運転の移動サービスを、福井県永平寺町などで開始している。

 デジタル庁がITS施策の司令塔に

このように、『官民ITS構想・ロードマップ』で掲げたいくつかの目標は、SIP自動運転ワーキンググループの活動を主体としてすでに達成されている。
今後についても、目標達成が期待される分野もある。
例えば、自家用車(オーナーカー)では、自動運転レベル2について一般道路での運転支援を「一部実現」とし、レベル4については「2025年目途」で「計画通り進捗」としている。
また、公共交通機関等(サービスカー)では、高速道路でのバスの運転支援として自動運転レベル2以上を2022年以降に達成する件については、「計画通り進捗」としている。
そのほか、物流サービスでも、高速道路でのトラックの後続無人隊列走行を2022年度以降で「計画通り進捗」とし、また高速道路でのトラックの自動運転レベル4の自動運転でも2025年以降で「計画通り進捗」としている。

一方で、SIP自動運転ワーキンググループについては予定通り2022年度で終了し、その後については「現状では第三期を設定する計画はない」(政府関係者)という。
そのうえで、政府主導での自動運転などITSに関する施策については、2021年9月に設立されたデジタル庁が司令塔となることが決まった。内閣府で行ってきた業務内容をデジタル庁が引き継ぐかたちだ。

 社会実装に向けて、議論の中心は「人」と「社会」

官民ITS構想・ロードマップについて、大きな方向転換に向けた準備がデジタル庁で進められている。これまでは前述のように、技術と法整備を主体として、それらの目標達成年を細かく定めてきた。
これから先は、自動運転や、より高度なADAS(先進運転支援システム)の本格的な社会実装の時代に入る。
そうなると、最も重要になってくるのは、利用者である国民ひとりひとりの生活や物事に対する考え方、そして社会全体の在り方になってくる。

デジタル庁ではその観点で有識者会議『デジタル交通社会のあり方に関する研究会』を2022年4月から開催している。
会議の名称からは、デジタルアーキテクチャやデータ関連のプラットフォーム、サイバーセキュリティといったIT関連技術についての議論を想像する人が少なくないだろう。
だが、その実態は「人」や「社会」の現状と変化、さらにあるべき姿について議論が交わされている。

一般的には、社会受容性という言葉で括れることが多い分野であるが、あくまでも議論の中心は「国民ひとりひとりの生活」である。
デジタル庁の組織は、戦略・組織グループ、デジタル社会共通機能グループ、国民向けサービスグループ、そして省庁業務サービスグループという4体系に分かれている。
今回の『デジタル交通社会のあり方に関する研究会』は、国民向けサービスグループが担当しており「国民の目線」が最重要視されている。

同研究会では社会の実情をしっかり把握するという意味で、バックキャストという表現を使っている。
その出口は、官民ITS構想・ロードマップを次世代に向けて大きく改訂することだが、議論の中心は「国民ひとりひとりの生活」なのだ。
筆者も、同研究会の委員のひとりとして、今後も様々な提言をしていきたい。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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