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ITS業界記事 物流業界で進むDX化
~三菱ふそう「FUSO eモビリティソリューションズ」や、東海クラリオン「THE BOXシリーズ」に注目集まる~

 三菱ふそうバス・トラック「キャンター」の歴史

物流業界でDX(デジタル・トランスフォーメーション)の普及が進んでいる。

例えば、三菱ふそうバス・トラックは2022年9月7日にEV(電気自動車)の小型トラック「eキャンター」を発表し、その中で「FUSO eモビリティソリューションズ」を提案した。
「キャンター」は1963年に初代モデルが登場し、日本の高度経済成長期を経て2022年現在までグローバルで普及してきたロングセラーモデルである。
EVについては、2010年に「キャンター E-CELL プロトタイプ」を公開し、その後、量産化に向けた開発が加速した。2017年には初代「eキャンター」を発売し、これまでにグローバルで累計約450台が販売されている。

今回、「eキャンター」として5年ぶりにフルモデルチェンジされ、電動機器のパッケージングを大幅に変更している。
具体的には、初代モデルではモーターや制御機器を車体中央部に配置し、そこからプロペラシャフトを介して後輪を駆動させるシステムだった。それを2代目モデルでは、モーターと制御機器を後輪駆動部と融合させた「eアクスル」を新規に開発した。

こうしたドライブトレインの小型化によって、配送車やゴミ収集車など、国内市場向けでは28体系、また海外では約80体系の車体構造への対応が可能となった。
また、EV技術の中核である駆動用の電池については、初代モデルは独ダイムラーグループ傘下の企業の製品だったが、2代目モデルでは中国の大手電池メーカーのCATL製を採用している。
電池容量は、ひとつの電池パックあたり41kWhで、最大で3つの電池パックを搭載することが可能だ。その場合、満充電での航続距離は約200kmになる。

三菱ふそうトラック・バスによると「現行の初代モデルは2022年に入って販売が好調だ」という。
背景にあるのは、日本を含めグローバルで広がる、企業のEGS投資への意識の高まりだ。ESG投資とは、従来の財務情報だけではなく環境、社会性、ガバナンスを重視した投資のことだ。ESG投資はSDGs(国連の持続可能な開発目標)とも密接に連動しており、物流業界においても、運送事業者はもとより荷主にとっても企業経営の最重要課題となっている。
そうした中でトラックの電動化は、避けて通れない事業改革のひとつに考えらるようになったと言えるだろう。

 DXを活用した物流事業のトータルマネジメント

ESG投資の観点で、物流事業で注目されているのが、電動化車両のみならず既存のディーゼル車やガソリン車も含めた、通信による効率的な事業運営である。
三菱ふそうトラック・バスでは、「FUSO eモビリティソリューションズ」という、EVを活用したトータルソリューションを事業者向けに提案している。

具体的には、「eデジタルサービス」として、バッテリー残量や航続距離などの車載データを事業者のパーソナルコンピュータで一括管理する「TRUCKONNECT」や、人工知能(AI)を活用して配送計画を最適化する「WISE SYSTEMS」をすでに導入している。
また、「eコンサルティングサービス」として、充電器の設置、ファイナンシャルサービス、バッテリーのリサイクルやリユースなど、EVにまつわる様々な事業領域について、メーカーである三菱ふそうトラック・バスが販売店と連携し、顧客に直接サービスを提供する体制を敷いているのが特長だ。

こうしたコネクティビティ技術を活用した顧客サービスについては、乗用車でもトヨタ「モビリティサービス・プラットフォーム」などが実用化されているが、一般ユーザーの場合はこうしたコネクティビティ技術の恩恵によるコストメリットを実感する機会が少ない印象がある。
一方で、物流事業の場合、EVとコネクティビティ技術との融合が、ESG投資による企業価値の向上のみならず、ランニングコストの削減効果を数値として確認できるのだと思う。

 予防安全技術もさらに進化

このほか、新型eキャンターでは高度運転支援技術も拡充した。
車両が左側通行する日本の場合、交差点などで左折時に車両側方の歩行者や二輪車を巻き込む危険性があるが、こうした事態を予防するため「アクティブ・サイドガード・アシスト」機能を新規搭載し、国内モデルに標準装備とした。
これはドライバーの死角に対する危険をレーダーでモニタリングし、左折の後方指示器の作動時やステアリング操作時に、警報音とランプで警告するシステムだ。
また、国内モデル向けに新規でオプション設定した「アクティブ・アテンション・アシスト」では、車内の顔認識カメラによって左右のわき見や眼の開閉状態を感知してドライバーに音と表示で注意を促す。

このように、三菱ふそうトラック・バスのような近年のトラックメーカーは、予防安全技術に対する装備を充実させている。
一方で気になるのは、車両後方に対する危険感知の対策である。

この点については、車載器の専門商社である、東海クラリオンが提供する「iBOX」が対応している。
「iBOX」は、既存の後方カメラやモニターに画像認識システムを小型パッケージ化したもの。モニター上で、車両が後退する進路上に進入する歩行者や二輪車などがいると、左右からの移動の方向を連続する矢印で表示し、またブザー音で警告する。

同製品について、国際物流総合展(2022年9月13日~16日、於:東京ビッグサイト)で取材した。
東海クラリオンの関係者によると「こうした後付けシステムは他に販売されていない。市場にあるトラック用の既存カメラとモニターシステムのうち、7割程度でiBOXが対応可能だ」と説明した。
また、新規システムとして、車両の側方に対する「D-BOX」や、工場や私有地での違法侵入に対してAI(人工知能)を活用した「AI-BOX」も参考出展。既存の監視カメラシステムに組み込んで使用する。

このほか、国際物流総合展では、NEC、パナソニック、日本郵便など大手事業者からベンチャー企業まで、DXやコネクティビティ技術に関する様々な製品やサービスを紹介していた。
自動車産業界でのDXは、こうした物流分野から広く社会に普及することで、結果的に住民にとって社会生活での利便性が上がるという感想を持った。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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