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ITS業界記事 モーターショーもビジネスモデルの転換期
~東京モーターショーレポート~

 入場者数増加の背景に、一部会場の無料化

第46回東京モーターショー(2019年10月24日~11月4日)が閉幕した。
開催前に懸念されていた入場者数は、主催者が目標とした100万人を大きく超えて130万人に達した。2年前の先回ショーでの77万人からほぼ倍増だ。

なぜ、ここまで一気に回復したのか?
理由は、一部の会場で入場を無料にしたからだ。
では、なぜ無料の会場を設けたのか?
理由は大きく2つある。

ひとつは、会場を分散させたことへの対応だ。先回まで主要な会場としていた東京ビッグサイト東館が、2020年東京オリンピック・パラリンピックのメディアセンターに改装されるため利用できず、お台場エリアの中でショー会場を大きく4カ所に分散した。4つの会場間は自動運転の鉄道「ゆりかもめ」と無料シャトルバスで結んだが、移動の手間を嫌って入場者が減ることを想定し、一部会場の入場を無料にすることで集客を狙った。

もうひとつの大きな理由は、出展する自動車メーカーが大幅に減ったことで、モーターショーとしての格式が下がり、入場者が減ることを懸念したからだ。
日本開催なので日系自動車メーカーは全社が出展したが、海外メーカーではダイムラーとルノーのみという寂しい状況。先回も、ファラーリやランボルギーニなどスーパーカーメーカーは未出展だったが、今回は日本での販売台数が多いフォルクスワーゲン、アウディ、BMW、ボルボなどが一斉に撤退したことに、ショー主催者は大きな衝撃を受けた。

こうした地元以外の自動車メーカーがモーターショーへの出展が取りやめる傾向は、昨年のフランスのパリショー、今年に入ってアメリカのデトロイトショー、そしてドイツのフランクフルトショーでも起こっており、問題の原因が東京ショーだけにあるとは言い切れない。逆の見方をすれば、これまでのモーターショーというビジネスモデルが世界的に成り立たなくなっていることを、東京モーターショーでも証明してしまったことになる。

ビジネスとしてみれば、主催者として今回は明らかに大幅収入減となっているはずだ。 ショーの主催者は、総入場者130万人について有料入場と無料入場の内訳を公表していない。また、自動車メーカーや自動車部品メーカー関係者はかなり多くの無料招待券を配っていた模様だ。そのため、先回に比べて入場者が倍増しても、入場料収入は横這い、または減少した可能性も否定できない。さらに、ショーとしての主要な収入である出展料についても、海外の大手メーカーが撤退したことで大幅に減少していることは間違いない。

 インパクトのある出展も少なめ

このように、今回の東京モーターショーは様々なネガティブ要因を抱えた状態での開催を余儀なくされた。出展内容についても、入場者が満足できるレベルだったとは言い難い。

日系自動車メーカーのブースでは、EV(電気自動車)の展示が目立った。マツダはSUV「MX-30」、ホンダはコンパクトカー「e」の量産車を披露した。
ただし、両モデルとも日本での販売にはあまり積極的ではなく、主要な販売先は国としてのEV販売台数に関する法律がある中国や、CO2規制が今後厳しさを増す欧州向けだと、マツダもホンダも説明している。そんな話を聞けば、日本人としては興ざめしてしまう。
日本では、2010年の日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」発売開始を機に、全国各地で充電インフラの整備が進んできたが、それでもEV販売台数は大きく伸びていない。日本人にとって「EVは特別なクルマ」という意識はなくなったとはいえ、ガソリン車に比べて利便性や、新車価格と下取り価格のバランスなどを考えると、EV購入まで至らないケースがまだまだ多い。

法律として、EV販売義務化が行われない限り、日本でのEV需要は伸びないことを、自動車メーカー各社も承知している。その上で、今回の東京モーターショーを日本のEV技術を世界に向けた発信する場として活用しているのだ。
自動運転に関する出展も、大方の予想通りめっきり減った。背景には、自動運転レベル3による社会導入について、世界各国や自動車メーカー各社が「事業として成立するまでには、もう少し時間がかかる」という共通認識を持つようになったことが挙げられる。画像認識の技術は着実に進化し、また国連での法整備なども進んでいるのだが、社会受容性についてはまだ大きなハードルがあることを、自動車産業全体として認識したことになる。

2020年代前半に実用化される予定の5G(第5世代)通信を活用した、コネクテッドカーサービスについても、インパクトがある出展がなかった。NTTドコモは、個人間カーシェアリング「Dカーシェア」などを紹介しているのだが、同ブース内に入る人の数はあまり多くない印象だ。やはり、モーターショーでは「クルマが中心」であり、「サービス中心」のビジネスモデルをユーザーに訴求することは難しい。
この他、無料エリアの「フューチャー・エキスポ」には、ドローン、VR(仮想現実)、顔認証による物販などを紹介していたが、現在のクルマとの結びつきを明確に表現した内容だとは思えなかった。
大きな転換期を迎えた、モーターショー。今後、東京モーターショーを継続していくためには、新たなるビジネスモデルを構築することが必須であると強く感じた。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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