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ITS業界記事 ETCのこれまで、ETC2.0のこれから

 ETCなど世界最高レベルのITSを実用化した日本

カーナビゲーションシステム、VICS、そしてETCと、日本はITS(インテリジェント・トランスポート・システム:高度道路交通システム)の実用化で世界最高レベルを誇る。
国土交通省によると、2016年3月時点でカーナビゲーションシステムの普及台数は約7,000万台、交通情報システムのVICSが5,000万台、そして自動料金収受システムのETCは5,300万台を出荷している。

こうした実績は、政府が1999年に当時の関係5省庁、並びに官民との連携により、9つの分野で172に及ぶサービスに関する研究を進めてきた成果である。
そうした日本のITS戦略の中で、2011年に導入されたのがITSスポットだ。ITSスポットでは、都道府県別の交通情報に限定されていたVICSを、全国レベルに一気に広げたダイナミックルートガイダンスを実現した。さらに、高速道路上の落下物や故障車の存在を後続の運転者に知らせたり、長いトンネルの先の気象状況をトラックドライバーに通知したりするなど、ビッグデータを活用した安全運転支援をETC対応機器に組み込んだ。
2015年からは渋滞回避によるルート変更で高速料金が低減されるなど、クラウドと連携したきめ細やかなサービスを拡充。名称も、ETC2.0と改めた。ETCとETC2.0との最大の違いは、車載器と道路側のインフラ(路側機)とが行う双方向通信のデータ量の多さだ。

 ETC 2.0が目指す4つの方向とは?

2017年10月現在、ETC2.0の路側機の数は、高速道路で約1,700カ所、国道で約1,900カ所だ。
それら路側機が車載器から収集するデータには、大きく2つの種類がある。

ひとつは、走行履歴データで、時間、位置(緯度・経度)、そして速度だ。データ収集のタイミングは走行距離200メートル毎、または進行方向が45度以上変化した場合だ。

もうひとつが、挙動履歴データで、時間、前後左右の加速度、そして水平方向に対するヨー角速度の変化だ。これらを、加速度が0.25G以上、またはヨー角速度が毎秒あたり8.5度以上変化した場合にデータを収集している。
こうしたデータは、いわゆるプローブデータを呼ばれて専用のサーバーでデータの統合と集計を行う。これを、首都高速などの道路管理者に送信している。

このような技術を踏まえて、ETC2.0が目指す方向性は、①道路インフラに対する賢い投資、②交通をマネージメントすることで渋滞と事故を減らす料金制度、③走行距離に対応する料金体系の採用など賢い料金の設定、そして④トラック輸送の最適化による賢い物流管理の4分野だ。

 「高速道路から一旦降りても、初乗り料金はなし 」などさまざまな取り組み

高速道路を走行中、一般道路のガソリンスタンドや”道の駅”などを利用するために高速道路を一旦降りて、再び高速道路を利用する場合、現在では初乗り料金がかかる。
これを、国土交通省では『高速道路外の休憩施設などへの一時退出』と呼ぶ。

ETC2.0を使って、こうした状況を改善する動きが出てきた。群馬県内の関越道、愛知県内の新東名高速、山口県の山陽道などで実証試験を行っているのだ。実証実験とは、一時退出の条件を満たした場合に、高速道路から降りなかった時と同一料金にする取り組みだ。
実証実験では、”道の駅”にETC2.0の路側機と同じシステムのDSRC(狭域通信)機器を設置し、高速道路から移動してきた自動車を認識している。

日本国内には2017年10月時点で、高速道路上のサービスエリアなどの休憩施設が25キロメートル以上離れている区間が約100区間ある。国土交通省では、こうした区間で、一時退出に対応するための取り組みを検討している。
この他、渋滞状況に応じて迂回した場合にETC2.0を搭載していれば料金を安くする取り組みもある。例えば、都心(都内)を通らずに圏央道を通って迂回することで料金割引が受けられるなどである。

このように、道路の混在状況に応じて料金差を利用することで交通の流れをコントロールするのだ。
また、災害や大規模な事故が発生した場合、高速道路を一時退出して再進入しても、高速道路を降りずに利用した料金を維持するシステムが検討されている。

別の観点では、トラック物流における通行許可の簡素化が実施されている(特車ゴールド制度)。大型の輸送車両の場合、事前に通行許可が必要で、走行する高速道路それぞれの管理者への許可の申請が必要だ。これを、走行履歴によるビッグデータを管理することで申請業務を簡素化し、トラック事業者と道路管理者の双方でのコスト削減につなげる。

ETC2.0の車載器は、2016年11月時点で約120万台。ETC普及台数の2%強と、まだまだ数が少ない。
今後、ETC2.0による様々な新サービスが実用化されることで、ETC車載器からETC2.0車載器への買い替え需要が期待される。
加えて、国土交通省のITS推進室の関係者よると、次世代型ETC2.0として車載カメラの画像をクラウドに取り込むサービスを検討されているという。

記事のライター

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

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