FURUNO ITS Journal

ITS業界記事 CESアジア現地取材。自動車ショーから、自動車「データ」ショーへ

 アメリカと中国、どちらのCESも主役は自動車

上海市街と上海浦東国際空港との中間地点、上海新国際展示中心で今年もCESアジア(2018年6月13~15日)が開催された。
CESはコンシューマ・エレクトロニクス・ショーの略称で、毎年1月にアメリカのネバダ州ラスベガスで開催されている世界最大級の家電とITの見本市である。そのアジア版として上海での開催が続いている。
CESアジアの会場の規模はラスベガスのCESと比べると4分の1程度と小さいが、場内には世界各地からの来場者で賑わっていた。

展示で目立ったのは、やはり自動車だ。こうした傾向はラスベガスのCESと同様だ。過去5年間ほどで、3Dプリンター、眼鏡や時計型のウェアラブル端末、そして仮想現実技術のVRなどがトレンドとなってきたが、出展社の事業規模では自動車メーカーが他の分野を圧倒しており、ラスベガスでも上海でもCESの主役は自動車といった印象だ。

 NEV(New Energy Vehicle)規制の影響が鮮明に

今回出展した自動車メーカーではドイツのダイムラー、アメリカのゼネラルモータース(GM)、日本のホンダ、韓国のヒュンダイとキア、そして中国からバイトンなどのEVベンチャーの姿が目立った。

中国政府は2019年から、自動車メーカー各社に一定数のEV販売の義務付けを課す、新エネルギー車(NEV)政策を実施する。NEV規制は、アメリカのカリフォルニア州が1990年から実施しているゼロ・エミッション・ヴィークル(ZEV)規制法を参考としたもの。中国政府とカリフォルニア州政府が技術提携する形で実現した。そのため、NEV規制とZEV規制の内容は似ており、EV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車など電動化の度合いに応じた換算係数を設けている。そこから算出されるクレジット数によって、電動車の販売台数を事実上、義務化するものだ。具体的には、NEV規制では2019年に中国国内需要全体の10%、そして2020年には12%の電動化を目指す。

 中国のEVバブルのなか誕生したバイトン。クルマをスマートフォンに。

NEV規制によって中国自動車業界ではEVバブルが発生しており、一攫千金を狙って多くのEVベンチャーが誕生している。
その中でも、バイトンの存在が大きい。ドイツのBMW出身のエンジニアらが2016年に立ち上げ、本社機能と組み立て工場を江蘇州南京に設立した。ミュンヘンに技術開発、またアメリカのシリコンバレーにソフトウエア開発の拠点を構えている。2019年後半から南京工場で量産を始めるのが、「エム・バイト」と呼ばれる5ドアクロスオーバー車。特徴は、運転席の前、横1250m×高さ250mmにも及ぶ巨大なヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)だ。ここに、スピードメーターなどの動力系データ、ナビゲーション、そしてSNSによるチャットなどをまとめて表示する。同社の幹部はCESアジアの基調講演で「クルマをスマートフォンにする」と詰めかけた1000人近い観衆にアピールした。

 バイドゥのプロジェクトアポロ。自動運転を軸にデータのオープンソース化

こうした自動車メーカー各社の動きと連携するように、今回大きな注目を浴びたのが、中国IT大手の百度(バイドゥ)のプロジェクトアポロ(アポロ計画)だ。
これは、2017年春に発表された自動運転に関するプラットフォームを指す。バイドゥについて、日本ではあまり知られていないが、簡単に言えば、中国版グーグルといったところだ。バイドゥの創始者はアメリカのスタンフォード大学で、グーグルの創業者らとほぼ同時期に、ウェブサイトでの検索サイトなどについて研究していた。北京に戻った後、検索サイトとデジタル地図の提供から始め、現在では人工知能(AI)研究についての大規模な研究施設を構えるなど、中国IT業界の中心的な存在となっている。

そのバイドゥのアポロ計画にはすでに、ホンダ、ヒュンダイなどの海外メーカーを含めて200社以上がアポロコンソーシアムに加盟している。
アポロ計画の特徴は、自動運転を量産化するための技術的な各レイヤーで、オープンソース化を行っている点だ。走行における基礎データとなる地図情報、カメラ・ミリ波レーダー・レーザーレーダーなどのセンサー、画像認識のソフトウエア、サイバーセキュリティ、自動運転レベル4での中型バスと小型自動配送車、さらには対話式の音声認識についても独自の規格としてDuerOSを立ち上げている。
DuerOSについては、2017年にヒュンダイとの技術提携を発表しており、今回の展示ではヒュンダイの多目的車(SUV)にDuerOSを組み込んだデモンストレーションを行っていた。
車内に設置した17インチの大型HMIに音声で入力し、家の中のエアコンやオーディオなどが作動させた。アマゾン・アレクサやグーグルボイスなど対抗して技術として、中国国内で事実上の標準化となるデファクトスタンダードを目指す。

この他、中国IT大手のアリババは、家電などの連携をBluetoothの新規格であるBluetooth メッシュを用いた技術を世界初公開した。専用の半導体チップをアリババが廉価で配布することでデファクトスタンダードを狙う。ただし、今回の発表では自動車との連携については明らかにしなかった。
このように、CESアジアではEVや自動運転をハードウエアとしてではなく、データビジネスための基盤として見る動きが加速している。

桃田 健史氏

桃田 健史   自動車ジャーナリスト

専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。
一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。
インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。
海外モーターショーなどテレビ解説。
近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラダイムシフト、EV等の車両電動化、そして情報通信のテレマティクス。

 

FURUNO ITS Journal メール会員募集中!「ITS業界に関する情報」や「フルノ情報」などをお届けします(登録無料) FURUNO ITS Journal メール会員募集中!「ITS業界に関する情報」や「フルノ情報」などをお届けします(登録無料)

FURUNO ITS Journal

2018年の記事

2017年の記事

2016年の記事

2015年の記事

このページのTOPへ